ビロードの爪
ビロードの爪 E.S.ガードナー
創元推理文庫 THE CASE OF VELVET CLAWS 小西 宏 訳
下院議員ハリスン・パークが、依頼人の女性と密会中に殺人事件が発生、現場に居合わせた人間は、警察から喚問を受けることとなった。
政治家は密会の事実がばれれば、政治生命を断たれてしまう。早くも赤新聞スパイシ・ビッツがかぎつけ、強請始めたという。
ところがメイスンが追跡すると、依頼人はなんとその赤新聞の影の経営者ジョージ・ペルターの妻イヴァ。
ジョージはイヴァと離婚係争中。
さらにイヴァに呼ばれて出かけると、風呂場にジョージの射殺死体。
イヴァの「そのとき2階でメイスンの声を聞いた。」の証言からあやうく犯人にされかかったり、あるいは現場の銃の所持者から、ハリスン・パークが犯人と考えられたりする。
しかし犯行時、イヴァがハリスンと自宅で密会していた事を突き止めたメイスンは、イヴァ自身が撃ったとする。
しかし、依頼人に対してあくまで忠実な弁護士であるメイスンは、遺産相続問題が絡んでいると考える。
にせの遺言状が出てきたが、それでは遺産が唯一の甥のカールに行くことになっており、そのカールは家政婦の娘ノーマと密かに婚約していた。
偽の遺言状を作ったとして、相続人からカールを除こうとするイヴァとその弁護士メイスン、殺人者の汚名を着せてイヴァを除こうとするカール、ノーマとその弁護士アトウッド。
この虚々実々の対決が面白い。
事実はイヴァがジョージを撃ったが死ななかった、その後カールが撃ったと言う物。
イヴァの弾丸が、浴槽の水の衝撃で痕跡を残していないところが目新しい。
「弁護士という商売は、依頼人をえり好みすることは出来ない、頼まれれば引き受けないわけには行かない。引き受けた以上は依頼人のどんなわがままでもきいてやるのが、この商売のルールだ(巻末、解説)」
という考えは、良い悪いは別として、作者あるいはアメリカ法曹界の考え方そのものであろう。
また
「登場人物の内の誰かが何事かをする、その行動そのものが、のっぴきならぬ証拠となるのである。」
という考え方もうなずける。
ただ、私はこの作者の作品は「危険な花嫁」に続いて2作目である。
依頼人がどうも怪しい、つけてみるととんでもないご婦人で夫と離婚係争中・・・・・何かパターンが同じような気もする。