角川文庫 THE ABOMINABLE MAN 高見 浩 訳
病院で治療をしていた古参警部のニーマンが、深夜惨殺された。
ニーマンについての評判は、最初は悪くなかったが、調べが進むうちに唾棄すべき男と呼ばれ、新米警察官いじめ、被疑者の強引な拘引、暴行等で仲間内では有名な男だった。
被害者が訴え出てもそれをもみ消してしまう力を持っていた。
マルチンベック等が却下された訴状を調べあげる内、元警官で妻を見殺しにされ、暴行を受けて退職させられた巡査、エリクソンが浮かぶ。
エリクソンは退職してから自閉症になり、可愛がっていた娘も病院に入れられるなどしたため、ニーマンとその同僚ハルト、さらには警察官全体をうらんでいた。
事件の前日、ハルトの名を使ってニーマンの家に電話し、病院を確認していることが判り、エリクソンの犯行は確定的となる。
最後は警官を殺してビルに立てこもったエリクソンを警察が一丸となって倒そうとする。
人間としての警察官とその悩み、警察内部に潜む問題点をあえて書き出したと言う点で特筆すべき作品と思う。
・捜査活動なるものは、現実主義と型にはまった手順と忍耐、それに組織活動の上になり立っている。偶然の一致によって解決される難事件が多々あるとはいえ、その偶然の一致なる物は単なる僥倖とは一線を画さるべき、含みのある概念であることも事実なのだ。(42P)
・警官を訴え出たところで埒があかないことは、誰もが知ってるからさ。 こと警察が相手となると、一般国民は何らの法的権利も持っていないも同然なんだ。(96P)