誰かが見ている    メアリ・H・クラーク

新潮文庫 A STRANGER IS WATCHING 中野 圭二 訳

異常心理者の犯行、早い場面転換、はらはらどきどきさせる、最後はハッピーエンド、しかしよく考えると話は少し出来過ぎている、心理描写も今一歩・・・・これらは最近のアメリカ映画の特色であるように思う。
この作品はそれらのすべてを備えている。
クラークはラジオのプロデユーサーをやっていたとのことでなるほどと思った。

2年前に最愛の妻、ニーナを殺されたステイーブは死刑推進論者。
テレビで反対論者の女流コラムニストのシャロンとニーナ殺しの犯人らしいトンプソンの死刑執行をめぐって激しい議論。
しかしこの二人恋人同士。
ところがこのシャロンと愛児ニールが正体不明の男に誘拐される。
身代金の要求は8万2千ドル、いやに半端な数字で、愛児の養育費としてとってある金額にほぼ一致。
犯人の声は隣のベリー夫妻によると「どこかで聞いたことがある。」
ニールとシャロンはニューヨーク・グランド・セントラル駅地下の一室に閉じこめられていた。
話途中でニーナ殺しの犯人がトンプソンではなく、この誘拐犯であったこと、犯行の目的がニーナの殺害現場をニールに見られていたからと分かる。
犯人はステイーブ家の家政婦ラフツの酒場での知り合いで、近くの自動車修理工だった。彼は異常心理者で過去にも何人の女を殺害し、その写真を撮ったり、恐怖の声を聞いたりして喜んでいた。
ついに身代金を奪うことに成功し、その部屋に爆弾をセットし、逃げだそうとする。
そしてお定まりの派手な警察と犯人の追跡劇。混乱する駅構内。
最後は二人が助け出され、犯人は自分の仕掛けた時限爆弾で爆死する。

電話の指示により、身代金引き渡しの場所を変えたとはいえ、警察がなぜ犯人を逮捕できなかったか、犯人がなぜ過去に多くの殺人を犯したか、犯行の目的が金か、証拠隠滅か、など論理的なつめが今一歩だ。
時系列で犯人側と追跡側の両方から書かれているから、はらはらどきどきの面白さはあっても、推理と言う点では劣る。犯人の推定が声で思い出したと言うようなすすめ方もいただけない。