ハヤカワ・ミステリ文庫 "B" IS FOR MURDER 嵯峨 静江 訳
キンジーは、ある女性から「わずかな遺産相続のために行方不明になった姉エレインを捜してほしいと」の依頼を受ける。姉はサンタ・テレサから例年のようにフロリダに行ったらしいのだが、はっきりしない。
そして姉の出かける少し前に近くのグライス家に強盗が押し入り、妻のマーテイを撲殺した後、放火するという事件が起きていた。
キンジーがフロリダに飛び、エレインのコンドミニアムを調べると、アッシャーという品のない女性が部屋を又借りしたとして入っていた。しかし、追求すると彼女は姿を消した。
事実は貧困に苦しむグライス家のレナード夫妻は、金持ちで優雅なエレインがうらやましくて仕方がなかった。そこでマーテイに見せかけてエレインを殺害、その金品を奪った。本物のマーテイはフロリダに行き、変装してアッシャーと称し、エレインの部屋とカードと預金を使い放題という具合。
犯行はエキセントリックなマーテイが主体となり、夫のレナードを引っ張ったものだった。
キンジーの地道な調査とその間にかいま見えるアメリカ女性の考え方が興味を引く。
・私の調査は、いつもたいがいこんな調子だ。メモをとり続け、情報の確認、そしてまた再確認。手がかりは追い求めても徒労に終わることが再三だ。それでも、私のやり方は、いつもこつこつと一つ一つ事実を拾い、偏見を持たずに捜査を進めて行く。すべては小さな事実の積み重ねだ。・・・事実の集積こそが真実を解き明かしてくれる(56P)
・(不随になった妻を見つめる夫)結婚生活の行き着く先は結局はこんなものなのか。よく通りを手をつなぎながら、助け合うようにしてとぼとぼとあるいて行く老夫妻を見かけるたびに、かすかに胸が熱くなるような感慨に捕らわれていたけれど、現実には、しょせん他人には分からない、別々の意志の塊のぶつかり合いなのかも知れない。・・・・・・・正直に言って、これまでであったうちの誰かと人生を共にするよりは、このまま一人でいたい。(100P)
・男なんてね、しょせんはホウイットマンのサンプラーチョコみたいなものよ。一個づつかじって味見をしたら、いたんで悪くならない前に箱ごと捨てちゃえばいいのよ。(112p)
・何がほしい?検屍解剖結果?状況報告書?聞き込み調査報告書?鑑識確認書?(151p)
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