フォーチュン氏の事件簿     H.C.ベイリー

創元推理文庫 THE CASEBOOK OF Mr.FORTUNE 永井 淳 訳

シャーロックホームズのライヴァルといわれる一人にフォーチュン氏があげられるらしい。1900年のころかかれた作品であるため、やや冗長な感じもするがプロットは非常に優れているように思う。「ながい墓」「小さな家」「聖なる泉」などが特に面白いように思う。

知られざる殺人者
何の関係もないように見られる若い女が喉を切られて死んでゆく。「他人の不幸を救うために忙しく働いている人間の中には他人の不幸を見るのが好きな人間もいる。(51P)」が主題。慈善活動家チャントラー夫人が犯人で、被害者の死によって深く悲しむ人間がいるのを見て、喜んでいた。最後は婚約中のフォーチュン自身がねらわれるが、犯人を倒す。

ながい墓
古い墓を掘りかえそうとする考古学者、手伝いをする夫人それぞれから最近人につけられている、よく動物の死骸に出くわすなどの訴え。二人は婚約中の様。フォーチュンは彼らをそれとなく見張りながら、なぜ墓を掘るのかを検討。事件の起こりそうな晩に待ち伏せていると、夫人、考古学者、それに考古学者にそっくりな男がやってきた。夫人とそっくりさんが組んで考古学者を殺して埋葬し、彼に成りすまして財産をのっとろうとしていた。

小さな家
隣家に入った猫を追うと、やせた女の子があやしていたが、尋ねると「猫は来なかった。女の子などいない。」との返事。それから青い紙にかかれた猫の絵が隣家から投げ込まれる。フォーチュン氏は答えかたから犯罪のにおいを嗅ぎ取る。実は隣家は化学者で、麻薬を製造販売していた。女の子はどこかからさらってきたもので、麻薬を打たれ、慰み者になっていた。

ゾデイアックス
トルコのクルデイスタンにある鉱山を開発するというゾデイアックの株価の動きが怪しい中、社長のビュア氏が死体で発見された。鈍器で殴られたような後があったことから、警察は他殺と断定し、疑いはライバル会社のフランクリン・リーにかかる。フォーチュン氏の調査の結果、ビュア氏は落雷で死んだ。リー氏に先を越され、財政的苦境に陥っていたゾデイアック社が、ビュア氏の事故死を利用し、リー氏を犯人に仕立て失墜させようとしていた。

小指
最初は単なるダイヤモンドの盗難事件と見えた事件が意外な見せて行く。ガーナーは自分の好きな女を取ったブランとを恨み、放火による保険金詐欺の疑いを着せて没落させた。ある時ブラントの娘はスマイリーという男を助けたが、彼は正義感。ガーナーがブラントにしたのと同じ方法でガーナーに放火のぬれぎぬを着せる。ちぎれた小指を証拠に残して・・・。

羊皮紙の穴
ブロスは気難しい古書収集狂。古美術商のブッソーネは偽物を売りつけて高い金を取ったが、お付きにトレヴェリクという目利きがいるからばれることは必定。そこで売った本を盗み出した。次に病院に本物があると聞き、本物を盗み出して偽物を置いてこようと計ったが・・・。

聖なる泉
ミセス・ブラウトの息子ジョナサン・ブラウトの死体が沼で発見されたが、それには蛾を捕るための糖蜜がついていた。そしてあまり悲しい顔をせず、捜索にも協力しない彼女。そして行方不明の夫。ミセス・ブラウトの仕えていたカラック家の息子ロバートが、ブラウト老人にそっくりであることにきずいたフォーチュン氏は池をさらうことを命令。死体がもう一つ出てきて・・・・。 ミセス・ブラウトはカラック家の世継ぎ問題で赤ん坊を取り替えた。 しかし外国に行っていた夫が戻ってうたがったので殺した。 同じ疑問にぶつかったジナサンは蛾の収集が趣味のロバートと対決し、殺された・・・・。

黄色いなめくじ(世界短編傑作集5)
ある村で、ワルガキだが、十歳にしかならぬ雑貨屋の息子が、いやがる妹の手を引いて池の中に入っていった。ほとんど溺れそうになるが助けられて病院へ。しかし男の子は「彼女を殺そうとしたのだ。」なぜ?フォーチューン氏がやってくる。
近くの原でおばあさんの死体がみつかったが、雑貨屋の二階に住み着いていた身よりのない婆さん。蓚酸カリをお茶に混ぜて飲んでいた事が分かった。近くから彼女のハンドバック。警察署長は自殺というが。フォーチューン氏は彼女のスカートに付いていた線がなめくじのものであることを見破り、余所で殺されて運んでこられたと考える。
雑貨屋の地下の穴蔵を調べると果たして死体をおいた後とナメクジ。
実は雑貨屋の亭主が妻の金を踏み倒した上、おばあさんにも金を借りたが返せない、それで蓚酸カリで殺した後、死体を子供たちの遊び場近くに放置し、妻の連れ子たちに罪をなすりつけようとしたもの。