フランス白粉の謎       エラリー・クイーン

創元推理文庫 THE FRENCH POWDER MYSTERY 井上 勇 訳

 ニューヨーク5番街の大百貨店「フレンチス」のショーウインドー、12時に展示の壁寝台を係りの黒人女性があけると、中からサイラス・フレンチ会長夫人(後妻)の銃殺死体が転がり落ちた。同時に娘(連れ子)のバーニス・カーモデイが行方不明になった。この謎にクイーン父子がのぞむ。
 まず夫人の鍵がなくなっている、犯行が行われたのは夜中の12時過ぎだが、ショーウインドーには灯りがない、被害者が口紅を塗りかけた途中で殺されている、ショーウインドーは見回りがあり、しかも警防室に近い、などから犯行は別の場所で行われたらしいと考えられた。フレンチ会長一家は百貨店内に自宅を持っており、そこでの犯行か。
 夫人の自室からみつかった口紅からころがりでたヘロイン、ブックエンドにわずかに付着した指紋採取用の粉、バーニス・カーモデイが吸ったと見せかけたタバコの吸い殻、彼女と被害者が遊んだらしいトランプ、箱に詰められたバーニス・カモーデイの帽子と靴など小さな証拠が次々に積み上げられて行く。

 そしてバーニス・カモーデイがヘロインの重症患者であったこと、フレンチ会長が悪徳防止協会の会長としてそういった行為を取り締まる側にあったこと・・・・・。そして死体はなぜショーウインドーに展示されねばならなかったのか。犯人はどうやって退社後、百貨店に入ったのか。どうやって犯行後姿をくらましたのか。
 実は死体発見を遅らさねばならない理由が存在したのだ!!一般客にまぎれてビルを出る、死体を公開することによって仲間に発覚したことを知らせる・・・。
 最後にヘロイン受け渡し場所が書籍売場主任の手によって新刊本の見返しに書き付けられ、伝達されていることが分かる。そして受け渡し場所の急襲、公開の場における消去法による首謀者の割り出し・・・・。

 指紋採取用の粉から捜査のプロの犯行と推定され、犯人が浮かび上がる。ヘロインシンジケートの発覚を恐れたことが原因で、バーニス・カモーデイは密かに殺されていた。非常に読み応えのある、本格的推理小説。国名シリーズの中でも傑出した部類ではないかと思った。

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