犯罪の進行          ジュリアン・シモンズ

ハヤカワ・ポケット・ミステリ THE PROGRSS OF A CRIME 小笠原 豊樹 訳

11月5日夜、ガゼット紙の記者ヒューベネットは、ガイフォークスデイの祭りを取材にロンドン郊外のファーウエザー町にいた。
ところが、祭りも最高潮に達した頃、ピーター街グループと称する不良少年グループが押し掛け、町の顔役コーピーを刺し殺した。
数日前に教会で暴れたのをコーピーにとがめられ、追い出されたのを恨んだものだった。
少年たちは逃げたが、すぐに目撃者が現れ捕まったが、尋問されて白状したロッキー少年は死体で見つかった。
首謀者はキングと呼ばれるジャックと労働党の州議会議員を父に持つレス。
しかし暗闇だったため、誰が刺したのかははっきりしない。
結局、レスは新聞社が後ろ盾となり、有能な弁護士を付けたため、無罪になるが、ジャックには有罪判決が降りる。
ところが勝ったはずのレスは浮かない表情、自分の裁判での嘘はよくわかっていることだし、応援したはずの父よりもジャックを尊敬していたからだ。
結局彼は自殺してしまう。

ガイフォークスデイを取り上げた点は面白いし、話はまとまっているのだが、私にはどうもこの小説の論点がはっきり見えないように思った。
裁判は検察側、弁護側双方の攻防は面白いが、どちらの側にも真実はどうであったかを知ろうとする真摯な姿勢が感じられない。それに絡む人々の苦悩が今一歩感じられない。
その結果がレスの自殺につながるのだろうが、レスの自殺するまで苦しんだ軌跡と言うものがはっきりしていない。実際の裁判というのは得てしてこういうものだ、ということなのかもしれぬが小説としては、「古くさい」私はもう少し感動させてほしかった・・・・。
これを書きながら大岡昇平の「事件」を思い出したがだいぶ違う。
なお、タイトルは私は「ある犯罪の審理過程」とでもする方が良いのではないかと思った。
・卵は割らなけりゃオムレツは作れないからな。(131P)