創元推理文庫 THE TOOTH AND THE NAIL 大久保 康夫 訳
結論部分が袋とじになっていて「あなたはここで、おやめになることが出来ますか?もしやめられたら代金をお返しいたします。」
とおおみえを切っている。
二つの話しが並行して進められ、どこが共通点になるのか最初は分からないところがミソ。
最初の話しは、ニューヨーク地方刑事裁判所で一人の男が地下室でアイシャム・レデイックなる運転手を、殺し、暖炉で焼却したらしい件に関する裁判場面。
被告は知らない、自室で気がついたら逮捕されたと言うが、暖炉から人肉らしい物を焼いた跡、黒こげになったすねらしい部分の骨肉、ベッド近くからは実際の被害者の切り落とされた指が発見される。
後者は、奇術として身をたてた男リュウがあるときフィラデルフィアから出てきて金をなくし途方に暮れている少女を救ったことから始まる。
やがて男と女は一緒になるのだが、出てきた理由を聞くと
「自分は幼いとき両親を亡くしたが、銅板作りの伯父に引き取られて生活していた。
しかし人の良い伯父は偽金作りに巻き込まれ、グリーンターフなる男に殺された。私は怖くなってその銅板を持ち出して逃げ出してきた。」
フィラデルフィア公演中、グリーンターフから脅迫電話がかかり、女が殺され、銅板が奪われる。
リュウはグリーンターフへの復讐を誓い、捜査を開始、ついに田舎で牧場主として暮らすハンフリーズが犯人と見破り、運転手兼使用人として住み込み、復讐の機会を狙う。
最後に、ハンフリーズにピストルを突きつけ、地下室に連行。
しかしハンフリーズが手斧で反撃、指を失う。
ハンフリーズが気絶したので、彼をベッドに寝かせ、手品で使う小道具を使って、ハンフリーズが運転手を殺したと思わせるような舞台をしつらえ、自分はリュウにもどってしまう。
これで裁判と奇術師の話がドッキングするというスタイル。 一種のスリラー小説。きびきびした裁判の尋問と、地下室にハンフリーズを追いつめる場面のスリルがよく描けている。裁判でハンフリーズは有罪を宣告されるのだが、根底に「罪体のない状況で有罪判決を下す。」という疑問に答えるというテーマが存在している。
・農場と言うところは、農業に人生を賭ける人は別として、ひどく孤独な所なのだ。・・・くらくなると、大地が広がって、あらゆる物が遠くへ遠くへ押しやられ・・・・(35P)
・「エドネーズ・シフト」というのは、一度切られたカードをもとに戻す技術で・・・(173P)
・偽名を使って出生証明書を取る。(230P)