新潮文庫 LES HUIT COUPS DE L'HORLOGE 堀口 大学 訳
アルセーヌ・ルパンがレニーヌ公爵の名の下に、若く美しい夫人オルタンス・ダニエルと共に8つの冒険に挑戦する。
塔のてっぺんで
レニーヌ公爵はロッシニーと駆け落ちしようとしたオルタンスを誘って、立ち入り禁止になっているアラングル屋敷に行く。
突然動き出す時計、展望台の埋められた銃眼のむこうの塔の上には二人の男女の死体。公爵は展望台から撃つという遠隔殺人をあばきだす。
この話でレニーヌ公爵のプロポーズにたいし、オルタンスは受け入れる条件として「10年近くも前に失われた古いコルサージの留め金を取り返してほしい。」と頼む。
水瓶
男は友達が保険屋から、「600フランを盗み、彼を殺害したかどで銃殺されようとしている」と訴える。
公爵はその男こそが600フランを盗み友達に罪を着せようとした男だと指摘。
男は帽子の箱に隠したフラン札を、水瓶の作る凸レンズの焦点に太陽光線を集中させて燃やし、証拠の隠滅をはかるが、ばれてしまう。
「ズームドルフ殺人事件」を思わせる。
テレーズとジェルメーヌ
電話の盗聴から崖の上から突き落とす事による殺人が行われようとしていることを知る。
そしてテレーズ・アンプルヴァルの夫ジャックが山小屋の密室で殺される。
夫の浮気の相手、ジェルメーヌは「あなたが殺したのよ。」とテレーズを責める。
しかし、実はジェルメーヌはジャックをそそのかして、テレーズを殺そうとしていたのだった。
テレーズが怒ってナイフで夫を刺したところ、自分で山小屋の密室に入り、そこで息絶えたものだった。
映画の啓示
「幸福な姫君」という映画のリハーサル中、姫君を見る脇役の男の表情が異常。
そしてリハーサル後、姫君と男が行方不明。さては姫君が男にさらわれたとアジトを探し当てると、男は姫君をなぶっている最中。
実は姫君はさらわれたものの、今では男に夢中、「幸福な姫君」と同じ場面を演じながら、ハリウッドに売り込むことを考えていた。
マーキュリー骨董店
留め金を見つけなければならない期限はせまっている。実はオルタンスの女中が盗み出していた。ところがこれは幸せを呼ぶ留め金。女中と結婚したパンカルジは今ではマーキュリー骨董店主。留め金を譲りはしない。しかしレニーヌ公爵はオルタンスの目の前で在処を見つけだし、取り返し、二人は結ばれる。
・人生に生きる価値のあるのは冒険の時間だけです。他人の冒険にせよ、 自分の冒険にせよ、きょうの冒険があなたを動転させたのは、
それがあなたの生命の最深部にふれていたからです。(45p)