爬虫類館の殺人   カーター・デイクソン

創元推理文庫 HE WOULDN'T KILL PATIENCE 中村 能三 訳

 1940年、ロンドンがナチの空爆に怯えていた頃、ロイヤル・アルバート動物園爬虫類館に1874年以来犬猿の仲の奇術の名門リヴァーズ家とパンサー家のケアリとマッジが、ロミオとジュリエットよろしくあらわれ、トカゲのケースを壊すなど一騒動起こす。そこにヘンリー・メリヴェール郷が登場し、どたばた劇の末、老管理係のマイクに引っ立てられ事務所へ。ところが館長の娘ルイズ・ベントンは有名人と知って大歓迎、その夜のデイナーに招待する。直前に断りの電話があったにも関わらず、出かけると、人影はなく、台所で料理が煮えており、館長のエドワード・ベントンの部屋はしまっている。
 無理に入ると、厚いゴム引きの紙で目張りした密室で、エドワートが、石炭ガスにより中毒死していた。戦争でロイヤルアルバート館を閉鎖しなければならなくなったため、悲観して自殺とも考えられた。しかし直前、彼は新しい爬虫類館のためにボルネオ産の木蛇を購入しており、それが死んでいたことから、ヘンリー・メリヴェール郷は他殺と断定する。そこに新館のために、アフリカから珍獣を買いつけているノーブル大尉の妻アンガスが駆けつける。南アフリカから動物を運ぶ船の許可が下りたのだそうだ。
 しかし他殺とすると犯人はどうやって犯行現場から脱出したのだろう。マッジが昔の奇術を頼りに、捜査を始めると、一度はガス漏れで、もう一度はコブラに襲われ、殺されそうになった。さらに夜中の亡霊にまで悩まされる。そのたびにケアリが助け、次第に若い二人の親密度が高まって行く。最後にガラスの人形にトランプを切らせる技術が、圧搾空気を使っていることに気づいたマッジは、密室のトリックを見破る。
 マッジの助けを得てヘンリー・メリヴェール郷が事件の種明かしをする。犯人は、アフリカから珍獣を買いつけ話を、どうせ戦争で実行しなくてもすむようになるとタカをくくって引き受け、前金を受け取った。しかしあんに相違し、船の許可がおり、運んで来なければならなくなった。発覚は確実!そこで館長を気絶させた上、ガス栓を開け、掃除機の吸引力を使って室外から目張りをし、自殺にみせかけようとしたのだ。最後にメルヴィル卿が蛇で犯人を驚かすが、実はガラスの上では蛇は動けない、というオチが面白かった。奇術師両家の対立も解消したようでめでたし、めでたし!

カーター・デイクスンにしてはめずらしくコメデイタッチの作品のように思う。プロットがなかなか素晴らしく、ストーリー性が高い。トリックは、今では目新しくなくなったが、当時は斬新だったのだろうと推察する。タイトルのHE WOULDN'T KILL PATIENCE は、彼は蛇を殺すはずがない、くらいに訳すべきもの。(1944)
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