ハヤカワ・ミステリ文庫 THE LABOURS OF HERCULES 高橋 豊 訳
ネメアの谷のライオン
召使いがチンを散歩させているとき、一瞬の隙にひもを切られてチンを連れ去られてしまう。そして身代金の請求。しかし、そのような事件が相次いでいると知って調べてみると、別のチンを飼っていた召使いが、自分のチンと誘拐しようとするチンとすり替え、後でひもを切ったものだった。
レルネーのヒドラ
医者の女房が少し前に胃潰瘍で死んだが、村には医者が女房を毒殺したとの噂。ポアロが噂の元を調べてみるとそこの看護婦。彼女はもし医者の病弱の女房が死ねば、私と結婚できるかも知れないと考え、砒素を定期的に飲ませていたものだった。
アルカデイアの鹿
男はパーテイで会った貴族の娘と称するバレリーナの女中に一目惚れ。しかし女の消息が分からずポアロに相談。ポアロは病の床についていた彼女を捜し出し、男と一緒になることを勧める。彼女は運転手の娘だった。
エルマントスのイノシシ
スイスの山小屋に閉じこめられたポアロのもとに、宿泊客の中に凶悪犯一味と落ち合うために紛れ込んでいるとの報。「わたしは刑事。」と密かにささやく給仕と捜査するうち、3人組が騒ぎ出し、ポワロは危機一髪、しかし以前の給仕が死体で発見される。ポアロは刑事とささやいた給仕こそ凶悪犯と指摘。
アウゲイアス王の大牛舎
フェリア卿にスキャンダルの噂を振りまき金をゆすりとろうとするX線ニュース紙。しかし、スキャンダル写真、報道はすべて「やらせ」であるとポアロは最後に証拠を突きつけて粉砕。
スチュムパロスの鳥
小さなホテルに滞在していた男は、ある母娘と親しくなる。しかし娘は暴力的な夫と結婚したために地獄の日々。その夫が訪ねてきたとき、誤って娘は夫を殺してしまう。事件をもみ消すがまた目撃者らしい婦人が現れ、強請られる。相談を受けたポアロは母娘こそが人の同情をひき、金を巻き上げる悪人であることを看破。
クレタ島の雄牛
男は父親とその友人の3人暮らし。しかし、男には狂人の血が流れているらしい。子羊やほかの動物の喉をかききったり、あるいはオウムや猫をころしたり・・・。男は追いつめられ、婚約者に「僕は結婚できない。」と叫ぶ。真実は男は父親がインドに言っている間に友人が亡くなった妻に作らせた子。男を狂人と思わせ、自殺させようとしていた。
・ダチューラという植物から採毒薬を少しずつ飲ませると、発狂・・・(256p)
デイオメーデスの馬
男はグラント将軍なる人物になって見せ、感化院から出た娘4人を引き取り、麻薬中毒にさせ娘と称させる。その4人を餌に世間の男を麻薬により堕落させ自分の意のままに働かせようとする。しかし、一人まともな娘が・・・。彼女が水筒に詰めた白い粉の話を漏らす。
ヒッポリュトスの帯
騒ぎに乗じてのルーベンスの絵画盗難事件。フランスの有名なカトリックの女学校に行くことになった女性徒がアミアン付近で突如として姿を消す。ところがポアロに相談してまもなく娘がアミアン付近で発見される。実は一味が女学生になりすまして絵画をフランスに送ろうとしていたのだった。女学生はロンドンで誘拐され、一味の女は女学生になりすまして列車に・・・・。
ゲリュオンの牛たち
わたしの友人がおかしな宗教に夢中になり、死後その遺産を教団に贈与するという遺書を書こうとしている、どうにかしてとの相談。ポアロは相談に来た婦人をその教団に潜り込ませ、麻薬で人を狂わせ、財産を盗ろうとする教祖の実体を暴露。
ヘスペリスたちのリンゴ
ボルジア家に伝わる血なまぐさい言い伝えのある壺。ポアロはそれを取り返してほしいと頼まれる。ある修道院で見つけるが、壺の内側に秘密のポケットがあり、そこに毒を忍び込ませるようになっていた。
ケルペロスの捕獲
犯罪から立ち直った伯爵夫人がクラブを経営していた。しかしそこは宝石と麻薬を交換する組織が暗躍する場とか・・・。ポアロが乗り込み、一味の首謀者を指摘。
・しかし20年はやはり20年であることを、彼は思い知らされたような気がした。ロサコフ伯爵夫人を廃墟だというのは酷かも知れない。
しかし、たとえそうだとしても、彼女は少なくとも壮観な廃墟であった。(380p)