ハヤカワ・ミステリ文庫 THE SKULL BENEATH THE SKIN 小泉喜美子訳
お嬢さん探偵コーデリアは、ラルストン卿の依頼により、死を暗示する台詞の書面に脅える女優の妻クラリッサの身辺警護のために、イギリス南部のコーシイ島を訪れた。
島では彼女を主役とする古典劇を演じるために島の所有者アンブローズ、ムンターなどアンブローズの召使い達、クラリッサの養子サイモン、従姉妹ローマ、付き人トリイ、演劇評論家のアイヴォ等がアンブローズの館に滞在していた。
館では子供が事故死したとき、クラリッサのせいで母のトリイが死に目にあえなかった事、悪魔の湯沸器なる井戸で、戦争中にナチへの裏切りの汚名を着せられ溺死させられた男の事、ローマがクラリッサに借金を申し込んで断られた事などおどろおどろしい事情が次第に明らかになっていった。そんな中、公演を明日に控えた夜、クラリッサが、自室で頭を叩き割られて死んだ。
グローガン警部等が捜査にあたるが、それぞれに動機がありながら、決め手がない。
そしてムンターが、プールに落ちて死んだ。
しかし、クラリッサは出版した本がヒットしたため、税対策のため、アンブローズが島に待避していたこと、これを知ってクラリッサが、島での演劇開催を強要したことをつきとめた。
しかしアンブローズによれば、公演開催直前、自らを高揚させるため、クラリッサは、日頃学費をだして保護してやっているサイモンを呼び寄せ、情交を迫ったが逆に殺されてしまった、ムンターはその事件を目撃されたため殺されたとの見方だ。
これを聞いて、サイモンは脱走し、悪魔の湯沸器なる井戸の中で自殺しようとするが、コーデリアが救助に向かう。ところが誰かがはね蓋を閉めたため、コーデリアのみが助かる。
コーデリアはアンブローズに
「犯人はあなただ。あなたははね蓋を閉め、私たちを消そうとした。」
と迫るが、彼は「逃げ道はいくらでもあります。」と涼しい顔
最後に犯人を追いつめながら、決定的な証拠がなく悪はそのまま放置されるという珍しい終わり方をしている。
解説に寄ればこの作者は「トリックやパズルに関心があって書く推理作家ではなくて、人間関係・人間性・動機といったものを主として描きたい。」と考えているそうだ。
そのせいか、孤島殺人という類型的な形を取りながら、謎を解くという醍醐味がやや薄く、唐突に結論に移行している。
また動機の説明ももう少し欲しいところだ。ただコーデリア姫の純粋な考え方や事実の捉え方は十分に描かれており、物語の進行に逢わせて読者に一緒に考えさせる強みは持っている。
・ペンギン版「引用文辞典」(95P)