本命 デイック・フランシス
ハヤカワ・ミステリ文庫 DEAD CERT 菊地 光 訳
著者はイギリスのアマチュア騎手の経験者の一人。それだけにレースにまつわる地の話に、非常に臨場感がある。
物語はレースに参加していた騎手のアランが、ずっと先行していた親友ビルの騎乗するアドミラル号が、最後の障害でつまずき、ビルが空中に放り出され、落ちていったのを目撃したことから始まった。
ビルは打ち所が悪く、絶命した。
アランがビルが落馬した障害を調べると、まいた針金があったが、それは警察に通報する間に誰かにもちさられていた。
事件は事故として処理されるが、故意だと考えるアランの執拗な調査が始まる。
やがて喧嘩騒ぎをおこすブライトンのタクシー会社ドライバーたちを中心とするブックメーカー一味が、次第に姿を現してくる。
ブックメーカーは本命の馬の騎手を脅かし、遅れさせ、施設馬券販売で巨利を得ようとしていた。
一方、アランは新しい美人馬主のケイトを恋し、彼女のジョージおじさんや、デップおばさんとも親しくなる。
タクシー会社は客が少なくて儲からない、ブライトンの店を保護を名目に強請ってまわったが店が自衛手段として犬を飼い始め商売にならなくなった事などが明らかになった。
アランはビルと同じ目にあい、殺されそうになるが追求の手をやめない。
最後にイギリスの郊外をドライバーたちに追われ、殺されそうになった末、見つけた陰で糸を引いていた犯人はまさにそのジョージおじさんだった。
文学的とか詩的とかいう要素はあまりないが、「競馬を主体にした活劇」という観点から見ると非常にスリリングでおもしろい。
おもしろい表現
・「愛というのはすぐ覚えるよ。」
私が言った。
「承知で危険を冒すようなものだよ、決心して怖がらないぞと自分に言い聞かせると、まもなく無上の幸福感をおぼえて、心理的な束縛からただちに解放されるよ」
「あとは女に赤ん坊が残るだけだわ。」
ケイトが頑張った。(171p)