創元推理文庫 THE CANARY MURDER CASE 井上 勇 訳
ブロードウエイの美姫で元女優のカナリヤことマーガレットがアパートの自室で絞め殺される。犯行時に正門側には電話交換番が、裏口は閂がかかっていたことから完全な密室である。宝石がなくなり、物色された跡があったことから、物盗りの犯行とも考えられたが、素人探偵ファイロ・ヴァンスの助言で、怨恨による殺人として捜査を開始。
4人の容疑者が浮かぶが物的証拠に乏しい。なかでも製造業者のスポーツウッドは最初にその夜の訪問が確認され疑われるが、彼が守衛にタクシーを呼んでもらって帰るときに、マーガレットの悲鳴が聞こえ、あわてて戻ると部屋の中から「何でもない。」の声を聞いた事が確認され、捜査圏外に去る。
そして事件を押し入れの中で目撃していたらしい遊び人のトニー・スキールが、「犯人を教える」と電話してくるが、殺されてしまう。
最後にファイロ・ヴァンスは、スポーツウッドを加えた容疑者たちとポーカーをやり、その様子から犯人を推定することを試みる。これにより、犯人はやはりスポーツウッドと確信したファイロ・ヴァンス等が再度マーガレットの部屋を捜査すると、ベートーベンのアンダンテの後、空白をおき、女の悲鳴と声を吹き込んだレコードが見つかる。
犯人は自殺をするのだが、させたと非難する刑事にファイロ・ヴァンスが「他人の生命をうばうことは・・・純理論的には・・・いかにも非倫理的であるかしらないが、自分の生命はその当人のもので、当人の好きなようにしてよい。自殺は譲渡しえない人間の権利なの・・・・・。」 と言うところが妙に印象に残った。レコードを使ったアリバイ作りと言う点でアクロイド殺人事件を思い出した。技術的にほかに毛抜きを使った閂開閉のテクニックが面白い。
ただし、畔上道雄「推理小説を科学する」では(1)ポーカーで性格を当てられるわけがない(2)スポーツウッドが自分の声をマーガレットの悲鳴や声として吹き込むのだができるわけがない。としている。
* ポーカーによる犯人推定
* 毛抜きを使った閂開閉
* テープレコーダーによるアリバイ作り
* 密室殺人
* 自殺の自由
r991018