創元推理文庫 THE CASINO MURDER CASE 井上 勇 訳
他の作品と同じく、探偵役は、美術愛好家ファイロ・ヴァンス、マーカム地方検事との組み合わせ。
リン・リュウエリンは、ナイトクラブの常連で、叔父リチャード・キンケイドの経営するカシノにいりびたりだった。その妻は、元ミュージカル・コメデイスターのヴァージニア。リュウエリン夫人は二人の結婚には反対だったようだ。ヴァージニアが自室で毒殺されて発見された。
胃の中からは毒物は発見されない。ついでリン・リュウエリンが、さらにリュウエリン夫人と妹のアメリアが毒物で倒れた。不思議なことに、胃から毒物が発見されず、すべてのケースで手元の水差しが空になっていた。
ヴァンスが、調査したところ、キンケイドの指示でリュウエリン家の友人アランが重水を作っていることが明らかになった。重水の毒性は明らかではないが、小動物が死ぬとの報告もあった。さてはキンケイドが犯人・・・・。しかし不思議なことに彼はその装置を隠そうともしない。
実はヴァージニアの死因は、鼻カタルの錠剤から抽出したベラドンナで、鼻薬にまぜたため、胃の検査では気がつかれなかった。後3人はリン・リュウエリンが常用していた薬物ニトログリセリンの過剰服用だった。
犯人は、実は妻を殺したかったのだが、犯行を隠蔽するため、自分を含め、3人を薬物中毒に陥らせ、かつ重水による犯罪であるようにみせかけようとしたのだ。最後に犯行を追求されたリンが、罠にかかりファイロを撃つが、銃弾はとっくにぬいてあった。
・ベラドンナ中毒・・・すべての徴候は、目はすわっているし、瞳孔は大きく開いているし、先のとがっ発疹があるし、体温は飛び上がるし、けいれんと窒息の形跡があるし・・・・話は簡単ですよ。(86P)
・病気と薬物反応のにているもの
胃腸炎、真性コレラ、十二指腸潰瘍、尿毒症、急性アシドーシス・・・砒素、アコニチン、アンチモニー、ジキタリス、アイオデイン、水銀、腐食性の酸やアルカリの中毒症状
破傷風、てんかん、子癇、脳膜炎に付随するけいれん・・・樟脳、シアン化物、ストリキニーネ
視力減退、瞳孔拡大・・・ベラドンナ系毒物、コカイン、ゼルセニュウム中毒
脊髄ろうによる瞳孔収縮・・・阿片、モルヒネ、ヘロイン
脳出血、てんかん、脳の負傷による昏睡状態・・・・阿片、パラアルデヒド、二酸化炭素、ヒオスシン、バルビタール(194P)
・ひとは本来知らないときだけ知っている。知るにつれて疑いは大きくなる。(196P)
・重水の製造(220P)
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