ハヤカワ・ミステリ文庫 LAST SEEN WEARING 大庭 忠勇 訳
バレリーという美貌の女学生が、失踪してから2年、突然、両親の元に無事を知らせる手紙が届いた。彼女はどこで、生きているのか。だが事件を引き受けたモース主任警部は直感的にもう死んでいるとの仮説を立てる。
送られた手紙が本物か否かの議論から、彼女の「フランス語教師のエイカムと会いにゆく。」とのメモを発見、その他小さな事実からもモース警部は
、以下のように考える。
(1)新任のフィリップソン校長はバレリーと一度関係があったらしい。
(2)エイカムとも関係があったらしい。
(3)この事実を知って、二人を教頭のベインズが強請っていたらしい。
(4)義理の父で清掃工場で働くジョンとも関係があったらしい。これを知って母親のグレースが怒っていた。
そしてこれらの捜査中に何者かによってベインズが殺される。モース警部は、ベインズ殺しは分からないものの、母親のグレースが誤ってバレリーを殺し、死体をゴミと共に埋めたと仮定、調査を始めようとする。その矢先、失踪後、バレリーが妊娠中絶手術を受けていることが明らかになり、間違いと分かる。
「やはり、バレリーは生きている。」と考えを変え、今度は娼婦のイボンヌを疑うが、これもアリバイがあった。実はバレリーはエイカムと結婚していて、捜査依頼はそれを知っていた両親が娘に戻ってきて欲しいがために打った芝居らしく、ベインズ殺し共々調査が打ち切られる。
モース主任警部が次々と仮説を立て、それが壊され、落胆するが、それでも一歩一歩真実に近づいて行くストーリー展開が魅力。また酒飲みでクロスワードパズルとワーグナーの「ワリキューレ」を愛するという警部の記述も面白い。同時に人はそれぞれのおかれた立場で物事を処理する、自分がこの立場にいたならどうしただろうかと読者に推理させる点も優れている。
・君は天才だ。saw notだ。・・・Watson。(117p)
・3人の孤立した人間が社会学者たちが好む家族という統計的単位によって、ともかくもひとつの屋根の下に集められ、結合されていた(131p)
・二つの干し草の間で迷い、ついには飢え死にしたロバの物語(187p)
・アリバイで問題なのは、ある人びとにそれがあって、ある人びとにはないと言うことではない。本当にやっかいなのは完璧なアリバイを持っているものは実際にはほとんどいないと言うことだ。(207p)
・人生とは失望の連続だよ、ルイス。 そんなことは君ももう身にしみていると思うがね。(381p)
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