創元推理文庫 LE CHIEN JAUNE 宮崎 嶺雄 訳
南西の烈風吹きすさぶ港町コンカルノーの夜の風景で始まるこの作品も、状況描写がうまい。税官吏の窓ガラスを通して、「提督」ホテルから出てきた酒類取引商のモスタガンが、倒れる光景が見えた。銃撃されたのだ。彼は、その日いつもの仲間で漁色家のル・ポンムレ、新聞記者セルヴィエール、土地会社支配人ミシューとカード遊びをしていたのだった。
やがて血痕のついた車を残して、セルヴィエールが消える。廃屋に潜む不振な巨人レオン、そして秘かに彼と逢い引きをする「提督」ホテルの女中エンマ。事件の度に現れるレオンのものらしい黄色い犬。そして「ブレスト」灯台新聞にレオンと黄色い犬の犯行を示唆する投稿。民衆はついに黄色い犬を撃つ。そしてル・ポンムレが自宅で殺される。
メグレは、エンマの居室に忍び込むと共に、レオンと彼女の過去を追求する。レオンはかって「美しきエンマ」号という船を持っていたが、不振なアメリカ人、ミシュー等にそそのかされて、アルコールらしきものを北米に輸出しようとした。しかし情勢変化による彼等の密告で摘発を受け、中味を調べるとコカイン。シンシン刑務所に捕らえられ、死の一歩手前まで追いつめられた。刑務所を出たとき、彼が考えた事は復讐とエンマとの再会だった。これを知ったミシュー等は凶行状態。
特に恐怖に陥ったミシューは、レオンと間違えてモスタガンを撃ち、投稿記事で大衆にレオンを殺させようとし、さらに裏切ろうとしたル・ポンムレを殺した。またセルヴィエールは殺された様に見せかけ逃走したのだった。理屈だけをこねまわし、なんとか助かろうとするミシューの描き方が実にうまい。
・ストリキニーネの毒の兆候(286P)
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