腰抜け連盟

腰抜け連盟          レックス・スタウト

ハヤカワ・ミステリ文庫  THE LEAGUE OF FRIGHTENED MAN  佐倉 潤吾 訳

私立探偵というのはこういうやり方もあるんだ、とびっくりする作品。
しかもこれが1935年出版というから、日本人との発想の違いを感じさせる。
ハーヴァード大学時代、学生たちが新人いじめをしたところ、その男チャピンがふぐになってしまった。
それから25年、彼は作家になり、かっての仲間たちがみんな死ぬような小説を書いて世間の注目をあびた。
そしてみんなの集まりのおり、判事のハリスンが崖から落ちて死んだ。
心理学者のヒバートがいなくなった。画商のドライヤーがニトログリセリンを飲んで死んだ。
そして次々におくられる皆殺しを詩にたくした脅迫状。
犯人はチャピンに違いない、と皆が思い、恐怖に駆られるが、決め手がない。
みんなは腰抜け連盟?を結成!
彼らの相談を受けたネオ・ウルフは、全員を一堂に集め
「犯人からの恐怖を解決してあげます。」
と宣言、しかも契約金額は調べ上げた収入に応じて1万ドルから5ドルまで。
一同図々しさにあきれるが、契約させられてしまう。
そして最後に、チャピンの恋人を妻にした医師のバートンが、自身の銃で撃たれ、その場にチャピンがいたことから警察に逮捕されてしまう。
ところが再びみんなを集めてネオ・ウルフは
「ヒバートは怖くなって隠れていただけです。出てきました。またここにチャピンの告白書があります「ハリスンの死は事故でした。ドライヤーは自殺したのです。しかし私は、これを機会にみんなを驚かそうと脅迫状を書きました。すみません。」ですからこれでみなさんの恐怖は取り除かれました。お金を払ってください。」
「バートンを殺した!」
「あれは状況からチャピンの犯行ではありません。犯人は分かっていますが、犯人逮捕は私の責任ではありません。」
犯人は結局バートンから金を盗んだ株屋のバウマンだった・・・・。

事故や自殺をさも自分のなした犯罪に見せる手口はデアンドリアの「ホッグ連続殺人」がそうだった。
バートン殺しは、なんとなくクリステイの「予告殺人」を思わせる。
しかし友人たちを種に小説を書き、逃げた恋人の下着を手に入れるために彼女のお手伝いと結婚するふぐのチャピンに作者はエールを送っているのだろうか、唾を吐きかけているのだろうか。

・人間はこの世についてしるべきことは、全て知るようになるのだが、ただそれには長い時間が必要だ。仏陀は知識と知恵を獲得する技術として、受動的であることを教えた。それは正しいが、ただ一つ遺憾なことに、人間の生命はそのために、哀れなほど短い。(12P)
・作家は、書くよりも遥かに大きな部分を、書かずにおかなければならない。そしてもっとも注意しなければならないことの一つは、その作品にとって重要な部分を、書き落とさないようにすることなのだ。(224P)