創元推理文庫 THE LICKY STIFF 小泉 喜美子 訳
アンナ・マリーは幸運だった。愛人だった暗黒街のボスビッグ・ジョー殺しの犯人にされ、電気椅子に送られる直前、真犯人が自白し、助かる。
ここで彼女のとった行動が傑作で、刑務所長ギャリテイと弁護士ジェシーを脅かし、死刑は執行されたことにし、自分は幽霊となって出所する。惚れた弱みで私立探偵マローンは彼女を本当に陥れようとした犯人探しに協力する事にする。
しかし事件の真相を知るものが次々殺される。
ジェシー、ギャリテイ、ビッグジョーのもう一人の愛人で歌手のミリー・デール・・・・・。
そして次第に明らかになる保護ゆすりの組織。
最後は手先の二人がマローンにやられたことから、暗黒街のもう一方のボスビルが浮かび上がる。しかし、ジョー殺しは別としても、ビルを巧みに操り、関係者を脅し、殺させていたのはマローンが愛した幽霊のアンナ・マリー自身・・・・。この辺は案外と常識的な答えかもしれない。
随所に現れる軽妙な洒落と色気が魅力である。
・・・今朝の朝食が終わったテーブルの上の残り物では、蠅一匹だって飢え死にしたに違いない。
・・・誰かが人を殺したとき、あなたはその誰かの使った拳銃を逮捕しやしないでしょう。・・・「考え事をしていらっしゃる音が聞こえましたわ。」マギーが軽蔑するようにいった。「僕はいびきはかかないぜ。」
・・・あなたの背格好から言うと、5分の虫にも一寸の魂じゃないの?
・・・殺人犯というものはいろいろと馬鹿げた失敗をするものだが、一方では「一人殺すも10人殺すも罰は同じ」という開き直りがあるのだ。
・・・「ヘレン、どうやってマッケオンが車をつかえないようにしたんだ。」「簡単よ。スピードを出しているときにバックにいれて、ギアの歯をかいちゃったのよ。」
・・・彼女があの日、ヘアピン一本隠せないような服装で「ハッピー・デイズ」にやってきたことをだれ一人思い浮かばなかったんだ。