暗闇へのワルツ    ウイリアム・アイリッシュ

ハヤカワ・ミステリ文庫 WALTZ INTO DARKNESS 高橋 豊 訳

 ルイスは37歳、いまだに独身だがお金持ち。通信交際会で知り合ったジュリアという女性と結婚することになり、新居も用意し、天にも昇る心地。今日は花嫁が乗せた船が着く日、岸壁で待つがジュリアの姿は見あたらない。
 がっかりしていると「あの写真は姉のものです。」と、やはりジュリアと称する楚々たる美人が、近ずいてくる。意気投合し二人は新婚生活に入るが・・・。 ルイスはジュリアが彼の金、5万ドルあまりを持ち逃げした頃、彼女が全くの別人あることに気がつく。本当のジュリアの姉のバーサと相談し、私立探偵ダウンズに調査を依頼する。ルイス自身も捜査をはじめ、ついに偽のジュリアの正体を見つける。彼女はボニーというたちの悪い女だった。

 本当のジュリアは、彼女の友達でいかさま師のビリーが、花嫁として来る途中、船から突き落としたと言う。彼は思わず銃に手をかけるが、同時に深くボニーを愛していることに気づく。 そして、二人して逃亡。
 しかし、ある町であの私立探偵ダウンズに見つかってしまう。攻守ところを変え、ボニーを捕らえようとするダウンズをルイスは射殺し、死体を借家の地下室に埋め、再び逃亡。やがてお定まりで金がなくなる。 ニューオルリンズの事業を手放す。それも一時。いかさま博打で稼ごうとするがなれぬルイスは大失敗。
 いよいよ金につまったボニーはビリーにそそのかされ、ルイスを殺して保険金を取ることを考え、体調の思わしくないルイスに毒を盛る。しかし、ルイスが死の淵にたったとき、ボニーは目覚め、彼を救おうとするがおそかった。音のない音楽が絶え、踊る人形は崩れるように床へ落ちて、ワルツが終わった。

 これもプロット、情景描写ともに素晴らしい。ボニーの性格描写が素晴らしい。彼女が最後の最後になってルイスを愛するようになる展開がいい。

「あたしね、ルイス、あたしは初めて愛することができたのよ。つい、半日前から。23年間かかって、やっと半日前からよ。」
ほかに印象に残ったボニーの言葉から
「ルー、あたしに新しいドレスを買って!・・・・・・・生きたいわ、生きたいわ、生きたいわ。どうせ短い人生だもの。二度と生まれ変わるわけにはいかないんだし・・・・。」
「戦場の兵隊は何十人と人を殺しながら、そんなことを何とも思わないじゃないの。おまけに勲章までもらうことがあるんだからね。」
「ああ、あなたがあんまりやさしいんで、胸がむかむかするわ。 どうしてもっと男らしくなれないの。」

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