創元推理文庫 THE 12:30 FROM CROYDON 大久保 康雄 訳
妻がパリで急死したとの報を受け、アンドリュウは娘のエルシーやその夫のピーターと共にクロイドン発12時30分の飛行機でパリに向かう。飛行機は天候不順でボーヴェ空港に着くが、アンドリュウが青酸中毒で死んでいた。
物語はここから一変し、甥で小さな工場を経営しているチャールズの目を通し、どの様にして彼がアンドリュウを殺すに至ったかを書く。苦しい経営、恋してしまった女、アンドリュウが死ねば入る莫大な遺産、一刻もならぬ猶予、それらが殺意の芽をはぐくみ、やがて彼はアンドリュウがいつも飲んでいる錠剤に目をつける。ロンドンで変装して薬屋から青酸カリを購入した後、それをたくみに錠剤にし、用意した同じ形の薬びんに詰める。そして夕食のときにアンドリュウのものとの巧妙なすり替え。
こうして第一の殺人が起こるのだが、執事のウエザラップが瓶の交換を目撃していた。チャールズは強請にきたかれを深夜のボート小屋に誘い、殺す羽目に・・・。
通常の探偵小説は探偵の側から描いているがこれは犯人の目を通して描く新手法の倒叙述推理小説、見事な物である。
* 倒叙述推理小説
* 青酸カリ
* 錠剤の製法
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