マダム・タッソーがお待ちかね    ピーター・ラブゼイ

ハヤカワ・ミステリ文庫 WAXWORK 真野 明裕 訳

  1888年、ロンドン郊外キューにあるハワード・クローマー写真館で助手のパーシヴァルが、青酸カリ入りのワインを飲んで死んでいるのが発見された。
「昔、撮られた恥ずかしい写真を種に強請られたために殺した」とハワードの妻のミリアムが自白し、絞首刑の日がせまった。
しかし、青酸カリの入っている戸棚の鍵を持っているのはハワードとパーシヴァルのみ。

本当に犯人かと言う疑問がおこり、スコットランドヤードのクリップ刑事が捜査に乗り出す。実はミリアムは弁護士のサイモンと恋仲、昔の悪事を種に強請るパーシヴァルをのぞくために芝居を打った。
パーシヴァルの死を自殺に見せかけようとしたが、毒がワイングラスでなくデカンタに入っていたため他殺と断定された。それならミリアムが自白し、助命の請願により、助けられることを狙った。 それもうまく行かぬならハワードを疑わせようと、鍵の疑問を吹き込み、最後にはハワードに失踪までさせた。
ハワード犯人説に傾いた当局にミリアムを釈放させ、ハワードが出頭するがアリバイがある、しかしミリアムは一事不再理の原則により、再び裁判に掛けられることはなく自由の身となることをねらった。
しかし最後にクリップの尋問で露見し、ミリアムはその死の時の衣装と共に蝋人形に作られ、タッソー館の一画を飾ることとなった。
脇の話しとしてだが、死刑執行人ベリーのミリアムの洋服をタッソー館に売りつけるという、小市民的なブラックユーモアが愉快だ。

・(青酸カリの用途)看板を用いる当節よりも、湿式コロジオン方式の頃の方が多量に使っていましたね。当時は主として定着液として使ったんですが、私は今でも陰画の濃度を下げるのに欠かせないと思っています。(117p)
・額縁に納まった写真の後ろに隠された、写真に写された人の名前(152p)
・鍵のトリック・・・・「ただし、(あなたが錠を開けたいと言ったのは)デカンターがしまってある飾り戸棚のことだった。 ・・・断られる気づかいはなかった。 ・・・鍵は鍵環に通してあった。その輪っかには毒薬用キャビネットの鍵もついていたという次第でね。 ・・・・(事件の後、医者がかけつけ)医者がキャビネットの中を見せてくれと要求した。 ・・・鍵はパーシヴァルのポケットの中だと医者に言った。 医者は鍵束を取り出し、キャビネットを開けて貰うためにあなたに渡した。 あなたは錠を回すとき、鍵束を手に握りこんで、はずした鍵が輪っかにはまっているように見せかけた。」(263ー264p)