ハヤカワ・ミステリ MOM,THE DETECTIVE 小尾 芙佐 訳
週に一度、ブロンクスのママのもとに息子でニューヨーク警察殺人課のデイビッド、嫁のシャーリー、時としてママのお相手候補のミルナー警部が、ローストチキンを楽しみにやってくる。そこで実際に起こった事件をママが鮮やかに解いてみせるいわゆる安楽椅子探偵物。家庭的な味であるが、なかなか鋭い切れ味の短編集だ。ママの提示する三つか四つの質問が事件解決の鍵になっている。
ママは何でも知っている
繁華街にあるホテルの客室でコーラスガールが殺された。エレベータガールの証言によれば、彼女が生きているのを見た後、中年の銀行家、浴槽修理の雑役夫、プレイボーイが訪れていて、いずれも犯人の可能性があるが決め手がない。殺されたコーラスガールが口紅を塗っていなかった事、室内のテレビが死体を発見したときつけはなしだったこと、みんなが宵の口に放映されたボクシングの番組を知っていたことからエレベータガールが犯人と見破る。
ママは賭ける
金持ちのグラデイは甥のバートレット博士とグロットオに行き、甥に塩の入っているスープと自分に入っていないスープを注文する。店では、主人が味を確かめた後、グラデイにいつもいじめられている給仕のアービングがもって行く。グラデイのスープに青酸カリが入っていてグラデイが死亡、アービングが疑われる。グラデイは相続財産がらみで甥殺害を考え、コックのルーイを買収、ルーイは甥のスープの中に青酸カリをいれたが、アービングがグラデイに塩入スープを飲ませてやれと入れ替えた。
ママの春
雑誌の文通欄で見つけた男性キースと恋におちたマーガレットおばさんが殺された。当日キースがおばさんを訪ねることになっていたために疑われるが、おばさんのことは知らないと言う。けちな甥夫婦はこの交際に反対していた。ママは手紙の消印、手紙の書き方の特色等から、恋人話しはおばさんの自作自演、殺したのは甥と見破る。
ママが泣いた
未亡人アグネス・フィッシャーと息子のケネス坊や、そこに評判の悪い空軍上がりのネルソンが転がり込んだ。何ヶ月かして、ネルソンが一家になじんだ頃、屋上から落ちて死んだ。一緒にいたケネス坊やが突き落としたのではないか。いや、いや、ネルソンはアグネスと懇ろになり、ケネス坊やにバットマンのまねをさせ、空を飛ばさせ、殺してしまおうと考えた。しかしお手本を演じるうち、空が余りにも明るかったから、落っこってしまった。
ママと呪いにミンクコート
貧乏学者のマクロウスキーが夫人にやっとマダム・ローザでミンクのコート買ってやった。しかしコートに前の所有者タンネンバウム夫人の霊が乗り移ったか、コートは独りでに動いてみたり、飛んでみたり・・・。あげく夫人が殺されてしまう。しかしママは夫人が夫がミンクのコートを買った為に本を売らなければならなくなったことを知り、返そうとして芝居をうったこと、コートは実はインチキ商品でそれがばれると困ったことになるマダム・ローザの主人が夫人を殺したことを見破る。
ママ、アリアを歌う
コーエンとダンジェロは共にオペラきちがいだが互いに憎みあっていた。オペラ座でマリア・カラスを聞いているさなか、コーエンが風邪薬を飲むと毒が入っていて死んでしまう。ダンジェロが疑われる。しかしママは薬剤師の甥が風邪薬を毒薬とすり替えたと断定。
ママは覚えている
親父に機械工になれと進められながら反対し、次第におかしな行動を見せ始めたオルテイス坊やが殺人犯として逮捕されかけたことは、ママに死んだユダヤ人の夫メンデルの結婚当時の事件を思い起こさせた。
酔っぱらった夫も一夜の行動をまったく説明することもなく、「おれは罪を犯した。」と言って逮捕された。
ママのママははっかの飴がなくなっていたこと、言動、使った金額等から、メンデルがレストランで豚肉を食べたことを突き止め、アリバイを証明した。
オルテイス坊やの場合も同じで、機械工になる決心をしたのだった。