メグレ罠を張る     ジョルジュ・シムノン

ハヤカワ・ミステリ文庫 MAIGRET TEND UN PIEGE 峯岸 久 訳

 モンマルトルで若い女が鋭利な刃物で次々におそわれる。メグレは警察の総力を結集し、犯人に向けて罠を仕掛ける。しかし変装した婦人警官がおそわれ、犯人は逃走。
 引きちぎられたボタンから足が着き、若い装飾家が逮捕される。彼は母親と妻に常に支配され、二人は支配を巡って冷たい対立を続けていた。そして彼はそこから逃げ出し、一人の男となるために犯罪を犯した。
 装飾家が拘置されているさなか、また一人女が刺し殺されるがこれは彼を救い、再び支配しようとした嫁の犯行。 むんむんした熱気の中でのパリ警察の捜査の様子がよく出ている。事件が奇をてらっておらず、現実味のあるところが魅力。

テイソオ教授の学説の項で、このような殺人を行う人間の心理を推定しているが興味深い。

・こうした連中はその周りの人々の間で長いこと、定見のない、無能な、知恵の遅れた人間として通ってきた・・・
・犯罪者たちは遅かれ早かれ自分のやった行為を自慢する・・・
・あなたの探している相手のような連中は、 自分でも知らぬ間に捕られようと言う欲求に駆り立てられているのです。

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