緑は危険           クリスチアナ・ブランド


ハヤカワ・ミステリ GREEN FOR DANGER  中村 保男 訳


第二次大戦中のロンドン、軍病院ではドイツの爆撃による負傷者の処理に追われていたが、そのうちの一人、老郵便配達人のヒギンズに麻酔をかけたところ、途中から苦しみだし、死んでしまった。
黒地に白い線の入った酸素ボンベ、緑の二酸化炭素、真っ黒の一酸化窒素ボンベがセットになっており、麻酔には酸素と一酸化窒素を混合して使っている。
看護婦のベーツは多情な女で、外科医のイーデンに恋して振られたが、そのやけっぱちな気分からパーテイの席で
「あれは事故じゃない。殺人だ。私はその証拠を握っている。」
と叫んだ。
そして手術室で執刀用のメスを刺されて死んでいるのを発見されたが、なぜか彼女は、死後白衣を着せられ、もう一度刺されていることが分かった。
コックリル警部は
「ベーツはヒギンズ殺しの証拠を握っていたために殺された。
その証拠の品とは、おそらく被害者が着せられた白衣だ。」
そして特志補助看護婦のフレデリカがガス漏れで殺されそうになり、さらに看護婦たちに手を出していた水兵のウイリアムがヒギンズと同じように麻酔中に死にかかったとき、コックリルの頭の中にある考えがひらめいた。

「酸素を止めろ!」止めて酸素ボンベの塗装を剥がすと下から緑の塗装があらわれた。二酸化炭素ボンベだったのだ。 殺されたベーツの表情が驚いた表情だったこと、ヒギンズの入院を知っていた者がわずか7人に限定されていたことから特志補助看護婦のエスターが犯人と判明した。彼女は救助隊が爆撃でがれきの下になった両親を見捨てた事を恨んでいた。その救助隊の中にヒギンズとウイリアムが入っていたのだ。

アガサ・クリステイばりのトリックと推理、それに著者自身が経験したことのある軍病院の人間模様が面白い。

・「モルヒネの致死量はどのくらいかね。」・・・
「4グレイン・・・それとも5グレインかな。」
「それ以上からだには言っても回復した患者が大勢いますよ。・・・でもそれは手当を加えてのことですが」
「2グレインが致死量になることはないかね。」
「さあ、わかりませんね。警部。そうとは決まっていないでしょう。」
「そうかと思うと半グレインで死んだ場合もあります。」(118p)