ミス・ブランデイッシの蘭   ハドリー・チェイス

創元推理文庫  NO ORCHIDS FOR MISS BLANDISH  井上 一夫 訳

 ちんぴらギャングのベイリー等は、パーテイの帰り道、牛肉王ジョン・ブランデイッシュの愛娘を、許嫁を殺して誘拐する。しかし、別のギャング団のスリム等のグリッソン一味が、ベイリー等を殺してミス・ブランデイッシュを奪う。彼等は身代金を得たが、スリムが彼女に惚れてしまう。グリッソンのお袋は彼女に麻薬を打ち、活力を無くさせる。
 捜査はベイリー等を追って進められ、暗礁に乗り上げていたが、私立探偵フェナーが登場し、急展開を見せる。お尋ね者で隠匿業のジョニーをしめあげて、スリム等がからんでいることを突き止める。彼等はミス・ブランデイッシュをかくまったまま、身代金をもとにキャバレーを開業していた。ベイリーの墓をあばいて、決定的な証拠をつかんだフェナーは、警察と共に乗り込む。

 暴力的、官能的で非常に面白く、これだけ感動したハードボイルドは私の読んだ中では大藪春彦の「野獣死すべし」位だ。この作品が1938年に、しかも週末を利用してアルバイト気分で書かれたと知って驚いた。特にミス・ブランデイッシュという美人を巡って男達が牽制しあい、それがお袋をも巻き込んで妙な対立関係を生み出すところの記述は、人間の心理を良くつかんでおり、抜群である。
 昔大島渚監督の「悪の華」という映画を見たことがあるが、 この作品を下敷きにしていることに途中で気がついた。

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