苦い林檎酒          ピーター・ラブゼイ

ハヤカワ・ミステリ文庫 ROUGH CIDER 山本 やよい 訳

私は大学講師セオ。ある日アメリカ娘アリスが強引にアプローチしてきた。
戦時下のりんご園で起こった殺人事件で当事9歳だった私は、裁判で被告のアメリカ兵デユークに不利な証言をし、彼は死刑にしてしまった。
なんとアリスは彼の実の娘で、父の無実を晴らそうとやってきたのだ。

その殺人事件というのはこうだった。
戦時下、私は、ロックウッド夫妻の経営するりんご園に預けられ、娘のバーバラに可愛がられた。
ふとしたことから、デユークとハリーというアメリカ兵が、りんご園を訪れるようになった。近くにクリフという若者がいて、バーバラにつきまとったが、彼女はデユークを愛しているように見えた。 ある日、私は、干し草小屋でクリフがバーバラと争っているらしい姿を見かけた。
その直後バーバラが自殺し、クリフが姿を消した。しばらく経ってから、アメリカ兵の持つ45口径の銃で、打ち抜かれたクリフの白骨化した頭蓋骨が、りんご酒を作る発酵桶の底から見つかった。その後、戦線から呼び戻されたデユークは、クリフ殺しの罪で裁判に掛けられたと言うわけだ。

アリスにせき立てられて、私はロックウッド農場、アリスのりんご園仲間だったサリーと再婚したハリーを訪ねる。
それらの聞き取り調査から、アリスは実はクリフとアリスは好きあっていたが、ロックウッド夫妻が結婚に反対していた。
そこでアリスは、デユークを好きなように見せかけて、クリフと逢う瀬を重ねていたらしい事実を突き止める。 犯人は結局ロックウッド夫妻と息子のバーナードだったわけだが、最後にセオが、バーナードに干し草小屋に追いつめられ、絶体絶命の状況で、アリスが駆けつけ、二人で火災の中、屋根を破って脱出するまでが迫力がある。

りんご酒の発酵樽の中から、白骨化した頭蓋骨が出てくると言うシーンはぞっとする。気が強く、頭の回転の速いヤンキー娘アリスの描写が面白い。

・手がかりになるものはほとんどなかった。りんご酒の発酵作用が皮膚、肉、脳組織を破壊しつくしていた。髪の毛一本残っていなかった。澱が細かなふるいにかけられたが、他に重要と思われるものは樽からは一つも見つからなかった。 水をいっぱいどうです?それとも、りんご酒は?(82p)
・記憶は我々が後から考えることに影響される。 だから、ストレスを伴う記憶が思いでの中で修正されてしまうのも、もっともなことなんだ。(217p)

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