伯母殺人事件         リチャード・ハル

創元推理文庫   THE MURDER OF MY AUNT  大久保康雄 訳


ぼくはウエールズの片田舎にうるさい伯母と一緒に住んでいる。
祖父が死んだ後、どういう訳か財産はすべて伯母が管理し、ぼくは給与をもらって生活している。
あるとき2マイルも先にある郵便局に、書籍が届いたから、歩いて取りに行ってこいという。
自動車で行こうと思ったが伯母は家中の車のガソリンを抜いてしまった。
それでもプライドの高いぼくは茶碗一杯ばかりのガソリンを見つけ、出かけたが坂道の途中で動かなくなってしまった。
そんなことがあってぼくは自由と財産を求めて伯母を殺す計画を立てた。伯母の車のブレーキに細工し、犬のソーソーをクッキーでしこんで、発進したばかりの伯母の車の前を走らせた。
伯母はハンドルを切り損ねて、谷底に落ちたかに見えたが、落ちたのは車だけで伯母は生け垣に頭をつっこんで助かってしまった。
次に眠り薬を飲ませて、遅動発火装置により火災を起こし、焼死させようとした。
アリバイが必要だから、家を離れていたが、戻ってみると燃えたのはぼくの部屋と本だけ。
伯母は火災に気づき、買ったばかりの消火器で消してしまった。
こんどこそと、大学の図書館で植物学や毒物学の本を調べ、庭に生えているアコニットの根をわさびと間違えて食べさせる秘策を練った。
もう、大丈夫・・・・。
本当にあの子は性悪でした。私は最初の事件のあった後、スペンサー医師の助言で甥が私を殺そうとしていることに気がつきました。
火災はとっくに予想していましたよ。
我が家の庭にはアコニットなんて毒性の植物は生えていません。
私がいっただけです。最後はあの子の車のブレーキに細工をし、あの子がアコニットを処理しているところを驚かしてやりました。あの子は大慌てで車で逃げようとしたのですが、谷底深く落ちていって爆発するのがテラスから見えましたよ。

「クロイドン発12時30分」「殺意」と並ぶ倒叙推理小説の代表作。成長していない自分本位なぼくの記述と、伯母の対応ぶりが丁寧に描かれている。

・「アコニット中毒。ふつうのアコニット、つまりトリカブトとかカブト花といわれるものや、それから採取したアルカロイドのアコニチンは、世に知られている毒薬中でももっとも猛毒なものであろう。 16分の1グレイン(約1g)のアコニチンが一人の男を死亡させたことが立証されている。」 「従来アコニットの根はワサビと見誤られて摂取されることが多い。」(197p)