大はずれ殺人事件   クレイグ・ライス

ハヤカワ・ミステリ文庫 THE WRONG MURDER 小泉 喜美子 訳

毒のあるユーモアが随所にあふれる殺人小説。殺人の方法よりも動機の糾明に力点を置いているところが面白い。
ジェークとヘレンの結婚式で、シカゴ社交界のナンバーワン、モーナが「絶対見つからない方法で人殺しをして見せる」と宣言。
ジェークはその賭にのってしまう。何しろ、彼女が失敗したらナイトクラブがそっくり手に入る・・・・。
そしてその翌日、群衆の中でガンブリルという男が撃ち殺される。
そしてダフネの継母フルーレットの射殺。
事件の陰には数年前エレン・オーグルツリーという女性が誘拐された事件があった。この事件は、結局けちで有名な父のウエルズが身代金を払って解決したが、実はエレンの狂言で、金は彼女に流れていた。
これを種に、当時事件の仲立ちをした暴力団のガンブリルが強請り、彼女が逆に殺してしまった。
エレンはこれをモーナの犯行と見せるため、彼女を強請る種になっていた書類を盗み、嫌疑がモーナにかかるような場所に、書類を移しておいた。
さらにフルーレットは実はガンブリルの妹で、彼女もガンブリル謀殺で、エレンを強請ったが、逆に殺されてしまった。
ジェークはめでたく事件を解決して見せたが、モーナの犯行ではなく、全く関係のない事件だった。
トリックとして、洋服を着ていた死体が死体安置所に着いてみると、スッポンポンになっていたという話が面白い。

面白かった言葉

「愛と同じく殺人もまた、もっとも親密な人間関係なのであります。
そして親密であるすべてのものの例にならい、これもまた殺害者と被害者の間の個人的な問題なのです。
殺人は、たとえば、誰かの存在が彼を除くに要する危険を冒すに足るほど不愉快になった場合などには正当化されたものとなります。
愛するものは言う「私はあなたがいなくては生きてゆけない。」。
そして殺人者はこう言うのであります、「私はあなたがいてはいきてゆけない。・・・・」