オランダ靴の謎   エラリー・クイーン

創元推理文庫 THE DUTCH SHOE MYSTERY 井上 勇 訳

 国名シリーズ第3弾。ニューヨークのオランダ記念病院に、階段から転げ落ちて意識不明になった百万長者の老婦人ドールンが、運ばれてきた。そしていざ手術と言う段階になって、白布をめくるとすでに針金で絞殺されていた。
 直前にびっこの外科医ジャニーに扮したらしい男が、手術台に近づいたという。次の手術を待っていたのは町の親分カダーイ、その親分に多額の借金をし、首が回らなくなっていた婦人の弟、ヘンドリック。
 ジャニーは、手術の直前見知らぬ男が訪ねてきて席を外した、だがその男の名はいえぬと言う。彼はドールン婦人から保護を受けていた。そしてその共同研究者でどこか超然としたニーゼル。被害者のところで働いていた狂信的なお手伝い、フラー。被害者の娘のハルダの婚約者で弁護士のモアハウス。容疑者は多くありながら、はっきりしないこの事件にクイーン父子がのぞむ。
 見知らぬ男スワンソンは、エラリーがジャニーが犯人と宣伝したことで自首した。実は病院をドールン婦人によって追われた息子で、ジャニーの弟と分かった。しかしそのジャニーが自室でやはり針金で絞殺されてしまう。
 さて、解決編。
 クイーンは、靴の紐が切れてそれを絆創膏でつないであった事から病院関係者が犯人、靴の敷皮が前に詰め込んであった、ズボンがめくってあったことから犯人はそれ等を着用していた者より著しく小柄、靴の減り具合が同じであることから犯人はびっこではない、第二の殺人で犯人は被害者が全く危険に感ずることなく背後に、しかも至近距離に接近できたことから極く親しい者、と実に論理的に絞り込んで行く。
 実は犯人はスワンソンの婚約者で、ジャニーと一緒に働いていたのだ。論理的でうまくできており、まさに推理小説の醍醐味。靴の疑問点を解明した下りは思わずうなった。

・糖尿病患者のは手術をする際、血糖値を、一時的に正常状態に引き戻す仕事をやらねばならないため、手術が非常に難しいと言うことを初めて知った。(29pあたり)
・ハドリアン皇帝の墓碑銘「多くの医者が余を滅ぼした・・・・。」(176p)

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