創元推理文庫 LA TETE D'UN HOMME 宮崎 嶺雄 訳
サンテ監獄厳戒房舎十一号監房からの死刑囚の脱獄、これを見守るメグレ警部一行。みなぎる緊張感・・・・。ジョルジュ・シムノンは実に雰囲気作りがうまい。場を描き出し、その連続により読者に謎を次々に投げ与え、いつのまにか夢中にさせる。
ヘンダーソン夫人とその小間使いが短刀で殺された。現場には足跡など花屋の配達人ウルタンの痕跡。彼は逮捕され、犯行を否認しながら死刑を宣告されるが、メグレは真犯人が別にいると確信し、彼を脱獄させる。
何者かが三文新聞「口笛」紙に、この脱獄が警察との共謀であることを暴露した手紙を送り、大問題になる。ヘンダーソン夫人等の死により莫大な遺産を得たクロスビー夫妻とエドナ。彼等をマークしていたメグレ警部は「クーポール」のバーでチェコ人医学生ラデイックとそれをつけねらうウルタンに出会う。
ラデイックは、さんざんメグレをからかう。最初彼は金がないように見えたが、突然羽振りが良くなり、きちがいじみいた行為におよぶ。金の出所を調べるとどうやらクロスビーらしい。そしてメグレに追いつめられたクロスビーの自殺。
メグレは「何も判っていない。」とうそぶくラデイックを徹底的につけ回す。実は金に困っていたクロスビーは「叔母が殺せたら・・・。」と考えた。これを1000万フランでラデイックが引き受けた。不幸な生い立ちの歴史を持つ彼は、後いくらも寿命が無いことを知っていた。そして自分が、誰よりも人の心を見抜く力を持っていることも・・・・。
ラデイックは、ウルタンを現場に物取りとして侵入させ、その直前にヘンダーソン夫人と小間使いを殺害、罪をウルタンに着せたのだった。
エンデイングに真実が暴露され、死刑場に向かうラデイックの絶望的な姿がメグレの生活と対比して記述されている。
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