新潮文庫 REBECCA 大久保 康雄 訳
ヒッチコックの「レベッカ」を見たとき、雨の後、森の中のマンダレー屋敷が忽然と浮かび上がるシーンに感動した。原作の持つミステリー的雰囲気が十分に醸し出され、ストーリーにも忠実で素晴らしい映画だった。
原作は上下2巻、読みではあったが、まるでキャンバスに一筆一筆絵の具を重ねて行くような心理描写、情景描写が感動的で一気に読んでしまった。
主人公の女性はモンテカルロで知り合った、英国紳士マクシムにのぞまれ、後妻として紳士の領地マンダレーに向かう。
しかし、そこには死んだ先妻レベッカ夫人の不気味な妖気が張り巡らされた因習と伝統に縛られた生活が待っていた。
そしてそれを墨守し、レベッカを敬愛し、新参の彼女を先妻の地位を奪う侵入者としてしか見ない、デンヴァース夫人。
彼女はマクシムがレベッカを今もって愛しており、自分は代役にすぎないと絶望する。
デンヴァー夫人のいじめの頂点は仮装舞踏会の晩にやってきた。
彼女は奸計に陥り、大恥をかかされ、夫の激しい非難の目を感じた。
しかし、翌朝、突然船の座礁した音。
それ自体はなんでもなかったが、潜った潜水夫がレベッカ夫人のボートと船倉に白骨化した彼女の死体を見つけた。マクシムは彼女に
「私とレベッカ夫人は世間的には理想の夫婦に見えても互い憎みあっていた。彼女は結婚後マンダレーの主権を握り、退屈するとボート小屋に男を引き入れては遊んでいた。
ある晩我慢ができなくなった私は彼女を撃ち殺し、死体を船倉に入れ、ボートを沈めた。」
と告白する。
「マクシムが自分を愛している。」と自信を得た彼女は二人でこの艱難を乗り切ろうとする。
ボートの製造業者の発言に端を発した、甥の必死の追求も、最後にレベッカが癌であったことが分かり、自殺と言うことで処理される。
二人がすべて解決してマンダレーに戻ったとき、屋敷が赤々と燃えているのが見られた。
・わたしはもう若くはなかった。引っ込み思案でもなかった。恐れもしなかった。マクシムのために戦うのだ。嘘もつこう。偽証もしよう。宣誓もしよう。神をののしりもしよう。祈りもしよう。レベッカが勝ったのではない。レベッカは死んでしまったのだ。(下222p)