裁くのは俺だ         ミッキー・スピレイン

ハヤカワ文庫  I,THE JURY  中田 耕治 訳


親友ジャックが、腹に45口径を撃ち込まれて死んだ。
私立探偵マイク・ハマーは、裁判のような面倒な手続きを踏むことなく、殺人者を同じように殺してやると誓う。
その日は多くの人が集まってパーテイをしていたから、その中に犯人がいるに違いない。
ジャックの婚約者マーナ、ジャックと同郷の女ヴィッカーズ、美人の精神科医シャーロット、暗黒街のボスジョージ、ジョージの知人ハル、ジョージの下で働いていたポポ、ベレミイ姉妹等等。
捜査を進めるうちに、郵便を使った巧妙な麻薬組織と、女子大生を集めて売春をさせる組織が浮かんで来る。
しかしその中心と見られたジョージやハルは、実は単なる手先で、しかも次々に殺されて行く。
やっとジャックが大学名簿を調べていたこと、後日開かれた売春にからむパーテイを知っていたことから、ハルが大学を渡り歩いて売春婦となる女を集めていたことが分かったが、証人たちは次々に消されていった。
しかし運び役のポポがヘロインを運んでいたことで犯人が分かった。
ヘロインを簡単に手に入れられる物、事件の現場に何時もいる人物・・・・それはマイクが夢中になり秘書のヴェルダをおいて結婚を考えた人物、シャーロットだった。

徹底した暴力と強烈なエロチシズムが魅力、特に最後マイクが真相を語り、銃口を向けられたシャーロットが一枚一枚縫いでゆく場面は強烈である。エンタテイメントとしては素晴らしい作品である。
ただ推理の過程は、江戸川乱歩のエログロ小説のように、ばさっと決めている感じで、随分荒っぽい。

・民衆か。やつらは、ときどきなんとまあ底ぬけに愚鈍になれるもんなんだろう。 殺人犯に対する法的な制裁。殺人者を思うままに跳梁させる言葉の抜け穴だ。 しかし最後には民衆がみずからの正義を持つのだ。 彼らは、ときには俺のような男を通して正義という物を思い切るのだ。 奴らは世間をいたぶるのだが、俺はやつらをいたぶってやるのだ。(25P)