ハヤカワ・ミステリ文庫 CALAMITY TOWN 青田 勝 訳
Dは見ていた。Aがカクテルを作り、Bが口を付けたところCが横取りして飲んだ。Bは中毒症状を起こし、Cは死んだ。犯人はAではない・・・・。実はBもDも犯人である可能性がある!
犯罪研究家エラリー・クイーンは、ニューヨーク郊外の架空の町ライツヴィルに、作家として逗留にきた。不動産屋から銀行頭取ジョン・F・ライトが次女ノーラのために建てた屋敷が、結婚式の前日、突然婚約者のジム・ハイトが失跡したため、空き家となっているのでどうか。しかしその家は買い取りにきたハンターという男がが突然恐怖におびえて死ぬ、などあって、地元の人は「災厄の家」と呼んでいる。しかしエラリーが「災厄の家」に落ち着き、ライト家をとりまく人々とも親しくなりかけた頃、失跡した夫のジム・ハイトが突然に戻り、ノーラとあらためて結婚することになった。おかげでエラリーはは屋敷を出ることになる。
引っ越し時、新妻の死を予告するような3通の手紙が発見され、開いた辞書には砒素の項目に書き込みがあった。新婚生活が始まるとまもなく、ジム・ハイトの妹のローズマリーが戻ってきた時から居着きだした。しばらくすると周囲のものは彼女の下品な話と奔放な生活に悩まされるようになった。ジムはどういう訳か金に困り、荒れていた。ノーラは神経質になり二度も倒れた。二度目の時ノーラの食べたものをチェックしたエラリーは砒素が入っていると確信する。あの手紙のように、誰かがノーラ暗殺を狙っている!
そして新年のパーテイの夜、ノーラが口を付けたカクテルを、ローズマリーが飲んだところ、砒素中毒でノーラが重態、ローズマリーが死んでしまった。ジムが僕が用意したと告白する。
ジムは逮捕され、有罪は確定と思われた。何より、あの手紙の件がある!しかしノーラはあれは偽手紙だ、ジムは私を愛していた、そんな事をする分けがない、と主張する。新聞は破廉恥な犯罪と書き立て、世間は非難したが、婦人通信員のロバータ・ロバーツだけがジム支援の記事を書いた。ノーラの妹パトリシアと陪審員の一人の関係が暴露され、裁判は一時中断された。その間、ジムが事故で死んでしまった。妊娠していたノーラは、未熟児ながら女の子を出産したが、やはり死んでしまった。
最後にエラリーの手によって真相が暴露される。「ローズマリーは、実はジムの先妻で二重結婚を種にジムを強請っていたのです。パーテイでジムも、ノーラも、彼女を殺すことを考えていたのですが、実際はノーラが、ジムが買っておいた砒素入りの殺鼠剤をカクテルにまぜたと考えられます。ジムの本当の妹は、ロバータ・ロバーツです。」
作者は「ローマ帽子の謎」でデビューし、バーナビ・ロスシリーズ、国名シリーズなどで成功を収めた後の作品。第二次世界大戦さなかに書かれたにも関わらず、細かい人間観察が行き届き、やさしさの感じられる作品になっている。文芸作品的な推理小説ということが出来ようか。私は冒頭のトリックを最初に考え、それを発展させ、ストーリーと人物像を展開させて行ったのでは無いかと思った。なお解説によれば架空の町ライツヴィルを舞台にした作品はこの後「フォックス家の殺人」「十日間の不思議」「ダブル・ダブル」「帝王死す」「最後の女」が書かれているそうだ。
・白砒(As2O3)・・・白色、無味、有毒(77P)
・マグネシア乳剤・・・砒素中毒に対する応急解毒剤(121P)
(1942 37)
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