さらば愛しき人よ       レイモンド・チャンドラー


ハヤカワ・ミステリ文庫 FAREWELL,MY LOVELY 清水俊二 訳

ロスアンジェルス私立探偵フィリップ・マーロウはセントラル街で、大男大鹿マロイにいきなりバーに連れ込まれる。店の名前は、フローリアン、マロイは、黒人支配人をいとも簡単に殺す。
彼は、8年の刑を終えて出てきたばかりで、元ナイトクラブ歌手ヴェルマを探していたが、その受け答えが悪かったからだけなのだ。
マーロウは、ヴェルマ探しを始める。
ジゴロのリンゼイ・マリオから盗られた宝石を取り返しについていって欲しいと頼まれ、ついて行くが、襲われ、気がついたときにはマリオが殺されていた。
宝石探しとマリオ殺しの犯人探しを、病身の富豪を夫に持つグレイル夫人に頼まれ、その上夫人にせまられる。
ヴェルマを探してフローリアンの元経営者の妻ジェシーを当たるうち、彼は捕らえられ、ジュールズ・アムサーなる精神科医に連れ込まれ、麻酔を打たれ、危うい目にあう。
やがてジェシーが惨殺死体で見つかる。
暗黒街のボス、ブルネットが経営している港の沖の賭博船に忍びこみ、大鹿マロイにあいたいと申し入れる。
自宅にマロイが訪ねて来て、事件について対応を話していると、グレイル夫人が訪ねてきた。
物陰で見ていたマロイは、彼女がヴェルマであることを見破る。しかし、飛び出した彼を迎えたものは、ヴェルマの5発の銃弾だった。
真相は、8年前ヴェルマは、マロイの愛人だったが、彼をある事件で警察に売った。
しかしマロイはそれを許しても、ヴェルマとよりを戻したかったのだが、ヴェルマは今は富豪婦人、その気はなく、ただおびえた。
ヴェルマは自分の過去が暴露されるのを恐れ、マーロウを襲い、マリオを殺し、ついには大鹿マロイをも殺すこととなった。
一方マロイはヴェルマを求めて、ジェシーまでも殺したのだった。
作者は若いときに詩を書いたという。全編に人生の哀しみを織り込んだ詩が感じられ、情景描写の素晴らしさとあいまって気品あるハードボイルド作品になっている。

・紙幣に紫外線でのみ感知する印をつける。(67p)
・夢遊病者の眼のような深さの知れない眼が、かって読んだことのある井戸の話しを想い出させた。それは九百年前の古城のある井戸で、石を投げ入れても、いつまでも水の音が聞こえないのだった。諦めて、帰ろうとすると、はるか遠くの井戸のそこでかすかな水の音がする、そういう井戸だった。(178p)
・ここは十八階だ。この小さな虫はただ友達を作りたいばかりにここに上ってきたんだ。友達というのは僕だ。この虫は僕のお護りだよ。(261p)
・スコポラミン・・・・意識を失わせてしゃべらせる薬(280p)