創元推理文庫 MALICE AFORETHOUGHT 大久保 康雄 訳
イギリスの田舎町に住むビグリー医師は、浮気遊びのすえ、周到な準備の元に妻のジュリアを殺そうと決意する。
薬剤で頭痛を起こさせ、その治療剤としてモルヒネを恒常的に与えると、やがて妻はモルヒネ中毒におちいり、みずからモルヒネをうち、死に至る。
しかし恋人クランミア、および捨てた女リッジウエイの弁護士の夫が疑いだしたため、パンに培養した腸詰菌の入ったペーストをぬったものを食べさせ、殺害を計る。
ジュリア殺しの裁判で、発掘された骨から検出された大量のヴァナジウムにより、新薬の使用を推定するくだりとその反論はおもしろい。
結局この裁判は無罪になるのだが、リッジウエイ殺しで再逮捕され、あっさり死刑になるところがびっくりする。
ストーリーを犯人の側から書いた倒叙法による代表的探偵小説。
ビグリー医師の自分本位な性格、犯罪を犯す過程、捜査陣とのかけひきと対立、裁判の過程での犯人の一喜一憂する心理描写等が素晴らしい。
作者の
「過去の探偵小説を、犯罪と探偵の興味を取り入れた文学作品にまで発展させるためには、数学的な手法よりも、心理的な手法に重点を置くべきであろう。
謎の要素はもちろん必要だが、それは何時、どこで、誰が、何故、というような謎よりも、人間の性格そのものの謎ときに進むべきであろう。(江戸川乱歩氏訳)」
という考え方は重要だ。
* モルヒネ中毒
* 倒叙推理小説
* 腸詰菌ペースト
* 人間の性格と犯罪