ハヤカワ・ミステリ文庫 DOVER AND UNKINDEST CUT OF ALL 小泉 多加志 訳
休暇中のドーヴァー警部夫妻は若い男がカリイ岬から飛び込むのを目撃した。
男はウオラートン警察の若い刑事、コクランで少し前に起きたこのあたりのボス、ハミルトンが手足を切断されて発見された事件を調べていた。
ドーヴァーは、ハミルトンもコクランも女遊びが好きだった上、ウオラートンの婦人会がこのような男を目の敵にしていたことから、女獣医等が中心となって男に去勢手術を施していた、その関係で死んだのだと奇想天外な仮説を立てる。
そういえば二人とも事件の前に1週間ほど家に閉じこもっていたことがあるが、去勢手術を施されたあと、回復するまでに要する期間と一致する!
そこで部下のマグレガー部長刑事に、町の一番いかがわしいクラブに通わす一方、「彼は女たらしだ。」との噂を振りまく。
マグレガーが婦人会に拉致されたらしいと判断した彼は地元警察を総動員して婦人会をおそうが、マグレガーはいない。
かわりに、秘かに検閲と称して、エロ映画を鑑賞遊ばされていた偉いご婦人たちが、飛び出してきた。
あきらめかけていたところ、マグレガーがひょっこり現れ
「犯人が分かりました。殺人は婦人会とは無関係です。 ハミルトンにシマを盗られた男がやったことで、コクランは真実を知ったからです。」
しばらくして地元警察署長が1週間ほど姿を消した・・・・。
6フィート、100キロを越す巨漢で、陰険、神経質、ケチで大食い、大酒のみ、その上、捜査は夫が殺されたら妻をまず疑えというワンパターン、そんなロンドン警視庁始まって以来の最低警部のドーヴァーがよく描かれている。
「アガサ・クリステイーのミステリをクレイグ・ライスの文体で書いたような」と言った人がいるとのことだが、まさにその通り。
両方をうまく兼ね備えている。 「切断」というタイトルも最初は何だと思ったが、読み終ってすばらしい訳と感心した。