講談社文庫 BODY OF EVIDENCE 相原 真理子 訳
翻訳をした相原真理子のあとがきによると、作者は男性探偵を主人公にしたものを書いたが、どの出版社からも断られ、日の目を見なかったそうだ。その後知り合いの編集者に相談したところ、自分のよく知っていることを書くことと、検屍官を主人公にすることをすすめられたという。そのせいか、検屍にかかわる専門的知識が豊富で、読者は100%分かるわけでは無いのかも知れないけれど、読後、何か、本物を味わったような充実感に捕らわれる。
作品を特徴づけるものに主人公の悩み、周囲の人間の描き方なども素晴らしい。おなじみの主人公の検屍局長ケン・スカーペッタが危機に陥るクライマックスシーンも話を盛り上げている。ただ推理の要素はあまりなく事件の捜査物語と言った感じである。
キイ・ウエストで何かにおびえ、人目を避けるようにしてすごしていた美人作家のベリル・マデイソンは、リッチモンドの自宅に戻った途端、家中を追いかけ回らされた上、惨殺されてしまった。ケイは押収したマデイソンの原稿が行方不明になり、検屍局がなくしたと評判の悪い弁護士から非難される。そしてマデイソンが師と仰いでいた世間嫌いの老作家の惨殺、その娘のレポメトルファンという非常に珍しい薬でのひっそりとした自殺。
わずかに残っていた手がかりから、精神病院にも入ったことのある孤独な青年、フランク・エイムズが犯人として浮かぶ。彼は洗車場で働くうち、マデイソンを見かけ、彼女をつけ回すようになったらしい。
スカーペッタはキイ・ウエストに飛び、マデイソンと仲の良かったボーイから原稿を回収し、老作家とマデイソンの醜い関係を知る。
しかし、それを持ち帰り、自宅に戻った時、空港に忘れた荷物を係員を装って届けた男は異常心理者エイムズだった。危機一髪・・・。
・チェンバレンガーデンズは、養老年金を宛にしなくても生きてゆける裕福な高齢者のための施設だった。・・・・しかしガーデンズはこの種の他の施設と同様、いわば金メッキの檻だった。どんなに豪華でも、心からそこに住みたいと思っている人はいないのだ。(87p)
・私は愛していると言ってくれるのをいつも待っていた。が、彼は一度も言ってくれなかった。朝になると私は空虚な気分に襲われるのが常だった。(143p)
・死体は1時間に約1.5度という速いペースで、体温が下がりつつある。(192p)
・保釈されるには三つの方法がある。第一は誓約書によるもの、 第二は現金または財産によるもの、第三は保釈保証人によりものだ。(283p)
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