シカゴ・ブルース    フレドリック・ブラウン

創元推理文庫 THE FABULOUS CLIP JOINT 青田 勝 訳

ある朝、エドが起きてみると父親のウオレスがいない。
継母のマッジは酔いつぶれているし、連れ子の妹ガーデイはだらしない格好で寝ている。
そのうち警察がやってきてウオレスが暴漢に襲われて殺されたという。
エドは我が家を飛び出て、見せ物小屋で働いていた叔父のアンブローズと独自の捜査に乗り出す。
酒場の主人の線から、暗黒街の顔役、ハリー・レイノルズとその子分二人が浮かぶ。
しかし、これは別の町の銀行強盗事件の犯人探しをしていたバセット刑事がしくんだ話でウオレス殺しとは関係のない話。
それでも初めてアンブローズとコンビで酒場の主人をしめあげたり、レイノルズの情婦のところ押し入り、彼女と懇ろになったり、そこに来た子分をばらしてしまったりするエドの武勇伝が面白い。
犯人は実は親友のバニーなのだが、実は数年前、別の町でレイノルズに金をもらいながら、 不利な発言をしたウオレスが、いずれ、逃げられぬと覚悟し、自分に妻宛の保険をかけておき、犯行当日酔っぱらって、バニーに自分を殺してくれと頼んだものだった。
この最後のつめ方はイマイチすっきりしない感じがする。
しかし、訳者のあとがきにあるように、やくざを描きながら、そこに人間らしさがあふれ、 さわやかな作品になっている。

読み終わって、口笛を吹き、カッコツケタクなる様な作品。原題はFabulous Clippoint、これをシカゴ・ブルースと訳したのは名訳だ。

・それは探偵雑誌だった。僕が読み始めた小説は、ある富豪がホテル・ルームで殺されているのを発見された話で、そのとき彼は、首に黄色い絹のひもを巻き付けられていたのだが、実は毒殺されたのだった。犯行の容疑者はたくさんいて、どれにも彼を殺す動機がある。彼がしきりに口説いていた彼の秘書。遺産を相続することになっている彼の甥。彼から大金を借りていた闇屋。女秘書の婚約者など。第三章で、警察が闇屋を黒と断定しようとしたとき、彼は殺害されてしまう。その死体にも絹のひもが巻き付けられていて、彼は絞殺されたと認定される。ところが実は絹のひもでやられたのではなかった・・・。 僕は本をおいた。バカにしている。殺人なんてこんなもんじゃない。 殺人とは今取り組んでいる事件のようなものだ。(70p)
・・・・この記述は作者の事件あるいは推理小説に対する考え方がよく出ていると思う。
・俺が言おうとしたのはそれだよ。坊や。 窓の外を見たり、何かほかのものを見るとき、自分が何を見てるかわかるかい。 自分自身を見てるんだ。物事が、美しいとか、ロマンチックだとか、印象的とかに見えるのは、 自分自身の中に、美しさやロマンスや、感激があるときに限るのだ。・・・・(109p)