死人はスキーをしない     パトリシア・モイーズ

ハヤカワ・ミステリ  DEAD MEN DON'T SKI  小笠原 豊樹 訳

ロンドン警視庁主任警部は休暇をイタリアのサンタ・キアラでスキーをしてすごそうと考えた。
これを知った上司が、宿泊予定の景観荘は密輸業者の巣窟だと言われている、ひそかにさぐりを入れてくれ、と命じた。
やがてロンドン・ヴィクトリア駅をたった国際列車はドーヴァー海峡、フランス、スイス、オーストリアを経て銀世界のサンタ・キアラについた。

4日後の夕方、搭乗口に降りてきたリフトにのっていたドイツ人フリッツ・ハウザーは銃で撃たれて死んでいた。
彼は麻薬の密輸の元締めらしく多くの人から恨まれていた。
フランコは男爵の妻と浮気をして強請られていた、景観荘の主人ロサッテイは昔の事件の弱みを握られ、利益を殆どフリッツに奪われていた、男爵家の家庭教師ゲルダは、戦争中に両親をハウザーに殺されていた、ロジャーは密輸の荷担していた等々・・・・。

しかもフリッツは元気でリフトに向かったのだから、登ってくるリフトにのっている者に撃たれたはずだが、ほとんどが対象者で数人をのぞいてアリバイがない。 ヘンリー夫妻は地元警察と協力して調査にあたる。
スキー教師ピエトロ・ヴェスピの兄ジュリオがスキー中に谷に落ちて事故死していたことが明らかになる。そして第二の殺人事件・・・・彼らの父でリフトの乗降補助員のマリオ老人がフリッツと同じようにリフト上で銃で撃ち抜かれて死んだ。
最初の殺人は、フリッツの麻薬密売にジュリオ、ピエトロが巻き込まれたのをやめさせようとしてマリオが射殺し、そのままリフトに乗せたものだった。第二の殺人はマリオに麻薬密売を反対されたピエトロが殺したもの。
いったんリフトで下に降りたように見せかけ、途中で飛び降り、登り行きで上に行き、殺人をおかし、別ルートで下に降りるところがミソ。ストックに麻薬を積めて輸送するテクニック、4人の観光客の事故死に見せかけてサンタ・キアラ脱出を試みた犯人に男爵が体当たりし、二人とも死んでしまうというエンデイングである。

犯人がピエトロではないかと言うところはかなり早く、わかるがそれでもトリックは比較的新鮮に見える。スキー場での練習風景描写なども巧みでムードを盛り上げている。
最初の殺人がおこるまでに、全文の2割くらいを要しているが、登場人物と雰囲気が読者に十分に理解されるよう書かれている。 犯人が登場人物に限定される一種の孤島型犯罪事件につながって行く訳だが、うまい出だしと思った。