死の匂い    カトリーヌ・アルレー

創元推理文庫 TU VAS MOURIR! 望月 芳郎 訳


 大富豪で一人娘で、わがままいっぱいに育ったステラは、卒中に陥り絶望と言われた父を、一時的にせよ救った医者のスペンサーと結ばれる。しかし根が遊び好きの彼女は、夫が中風の研究にしか目がいかないのが面白くない。またステラの美しさに引かれたとはいえ、研究施設を建ててもらうことを 念頭に入れて結婚した夫は、その場逃れを続け、しかも博打では湯水のごとく金を使うステラとはあわない。やがて父が死に、二人の間に激しい争いが・・・・
 「あなたは、私がこの家を買ったからこそ、ここにいられるのよ。あなたより私の方が力があるわ。あなただって、あなたに言わせれば猿同様、金でもって、私に買われたんじゃない。」スペンサーは怒り、一時的に失神した彼女に中風になる菌を注射する。ついに彼女は研究施設の資金を出すことを認めるが、夫は研究の為にニューヨ ークに行ってしまう。
 「おとなしく静養していれば、体力が回復するだろうから、その時血清注射を うってあげる。そうすれば君は元通り回復するよ。」と夫は言うものの、彼女は復讐の念に燃える。そこで動けない体で夫がつけた看護婦ベルモントを味方に引き入れよう、と夫の悪事を暴き立てる。しかし、それがスペンサーに知れ、彼はついにベルモントに多量の睡眠薬を投 与させ、殺そうとはかる。

 ステラは死が近ずくにつれて、夫への愛に目覚めた様子を見せるが、もう遅い。作品はステラの目を通して描かれている。発行書店の広告では「サスペンス」に分類 している。ただ話としては同じ作者の「わらの女」ほどの起伏が乏しい。また夫スペンサーのエゴイズムの取り上げ方がちょっと浅いような気がする。
 ところで本当に中風になる薬とかそれを直すために決定的に効果のある血清な どと言うのが存在するのだろうか。

*中風になる薬とかそれを直すために決定的に効果のある血清

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