ハヤカワ・ミステリ文庫 I MARRIED A DEAD MAN 中村 能三 訳
賭博師のジョーゼッソンに捨てられた身重の女、ヘレンはわずか5ドルとニューヨークから故郷のサンフランシスコに行く列車に乗り、そこで新婚後初めて実家を訪れる富豪のハザード夫妻と知り合う。ところが思いもかけぬ、列車の転覆事故、気がついたときにはヘレンはハザード家の新妻、グレースとして、病院のベッドに横たわり、坊やが生まれていた。そしてハザード夫妻は帰らぬ人となっていた。良心の痛みを感じながら、成り行きに任せた彼女は両親に愛され、死んだドナルドの弟のビルに愛され、幸せそのものであった。
しかし、ジョーゼッソンが真相をかぎつけ、彼女を脅迫する。金ではない、彼女と結婚し、ハザード家の遺産の相続に預かろうと言うのだ。ついに彼女はジョーゼッソンを殺すことを決意、密かに彼のアパートに忍び込むと、なんと彼は殺されていた。その上、現場にはビルが・・・。
ビルは事件をうまく処理してくれた上、彼女に結婚を申し込む。やがて母の死。母は最初の遺書で、母がジョーゼッソンを殺した、と告白。二人は結婚し、幸せの頂点に立った。
しかし結婚後、開封した2通目の遺書には「もちろん殺したのは私ではない。」とある。それならば本当の犯人は、私はあなたと思う。しかしあなたは「君のせいではない。」といいながら、やっぱり私が犯人だと思っている。幸せでありながら、いつかは出ていかなければならない、この家庭・・・。
それにしてもプロットのうまい小説である。そんなうまく行くわけがないと思いながら、ついつい次が読みたくなる、そんな小説だ。加えて翻訳した後のくせに情景描写が実に叙情性があり、素晴らしい。
* 他人になりすます
* 私でなければあなたが犯人
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