推定無罪    スコット・トウロー

文春文庫 PRESUMED INNOCENT 上田 公子 訳


アメリカ中部の大都市で地方検事を選ぶ選挙戦のさなかに、美人検事補の キャロリンが全裸の絞殺死体となって見つかる。
主人公のサビッチ主席検事補は、実は被害者と愛人関係に会った男、妻のバーバラとは離婚寸前。犯行は恨みか金銭か、捜査はようとして進まない。
やがて主人公のボスが選挙戦で敗れると事態は意外な展開に・・・。
新検 事補のニコは主人公を犯人として告訴する。動機もある、犯行当時、妻と家 にいたという証言は信用できない、現場からはサビッチの指紋の付いたカッ プが発見された、被害者はサビッチと同じ血液型の男と性交渉があったなど の状況証拠が積み重なる。サビッチはその夜彼女を訪れ、関係を持ったが、 何らかの原因で口論になり、殺したのだろう、そして行きずりの犯行に見せ かけたのだろうと言うものだ。
しかし裁判が進むうち、有能な弁護士スターンや妻のうって変わった献身 により、検察側に不利な状況が積み重ねられる。
そしてB級ファイルの存在とそのころの事件にまつわる話が見え出す。キャロリンは、肉体を武器に出世しようとしており、その キャロリンにトミーが熱をあげていた。しかもトミーは暗黒街のボスから金を受け取っており、それには今回の判事のラレ ンまで関係していた。ついに今回の事件がどうやらトミーがニコをたきつけて無理矢理立件しようとしたことが次第に明らかになる。
結局、監察医タツオ・クマガイのキャロリンが避妊剤を用いていたと言う 証言は、彼女が子供のできない体で間違いとわかり、立場が逆転。
ついに検察側は告訴を取り下げるという事態に陥る。
しかし、それならば犯人はいったい誰か。トミーか、それとも判事のラレンか・・・。
秋になり、サビッチは血の付いていた、庭仕事に使う万能バールを取り出し、物思いに耽る。彼が妻に犯行を打ち明けられたのは、自分に容疑が降 りかかった頃だった。
果たして彼女は夫に嫌疑がかかって協力を申し出たのか、それとも夫を陥しいれようとキャロリンを殺したのか・・・・。こうして事件は終わったが、妻バーバラとの間には越え用のない溝が広がっ ている。

アメリカの法曹界の現実を描く問題作と言うこともできる。
検事と判事が結局は同じ穴の狢であり、しかもそこで働くものは権勢欲、出世欲、金銭欲等を動機にうごめき、最終的には政界にうって出ようとする野心でいっぱい。
このような現実をどう考えるかという問題提起がこの小説のポイントであろう。

* アメリカ法曹界の内幕

r990212