スクールボーイ閣下      ジョン・ル・カレ

ハヤカワ文庫  THE HONOURABLE SCHOOLBOY  村上 博基 訳

ソ連諜報部の工作指揮官カーラの策謀により、ビル・ヘイドンが長年に渡って裏切り続けたため、香港の英国諜報部<サーカス>は、ある時、壊滅的な打撃を受けた。
組織を立て直すべく就任したスマイリー閣下は、陣容を一新し、膨大な記録を分析し、カーラの弱点を解明し、反撃することを心に誓った。
併せてイタリアでぶりょうを囲っていた新聞記者のウエスタビーを、臨時工作員として採用し、現地に派遣した。
分析の結果から、パリから東南アジアにのびるソ連の極秘送金ルートが明らかになり、ウエスタビーの調査の結果、金の受け皿が香港の実業家ドレイク・コウであることがわかった。
コウは不遇の幼少時代を終え、麻薬などにも手を出して成功を収めた男で、最愛の弟ネルソンを中国情報機関最上部に、カーラの二重スパイとして送り込んでいた。
そして今、弟を中国から脱出させようと、はかっていることが判明した。
スマイリーは、脱出時にネルソンを捕らえるべく秘密作戦を開始する。
しかし、ウエスタビーは、コウの愛人リーゼに恋心を抱きはじめ、世話をしてくれた香港の銀行家フロスト、同僚の新聞記者ルークをコウの執事チュウに殺された恨みを胸に、独自の行動を取り始める。
そしてついに・・・・・。
従来、私が読んだスパイ小説は、個人プレイに近い筋の物が多かったが、これはスマイリーをヘッドとする<サーカス>が組織として、どの様に行動をしたかにかなり重点を置いて描かれているところが特色である。
組織を上に認めさせる努力、個人の感情を押しつぶしてしまう非情さ、アメリカスパイ組織<カズンズ>との確執などに主眼がおかれ、ウエスタビーはともかくスマイリーの武勇伝と言ったものはない。実際のスパイ活動に一歩近い物なのだろう。その辺が魅力であるが、逆に後半のウエスタビーの行動形態とともに、わかりにくい点も否定できない。文章も隠喩が多すぎ、余計に我々には理解を難しくしている。

・文書は長めにな。ジャーナリストが小説を書くと書き方が短い。パラグラフが短い。センテンスが短い・・・・ヘミングウエイがまさにそれだった。(上153P)
・きょうの友をスパイしておけ。彼らは必ず明日の敵になる。(下47P)
・国になにをしてもらえるかと問うな。国のためになにができるかと問え。(ジョン・ケネデイ)(下191P)
・手榴弾をガソリンタンクに落としこみ、ガソリンがゴムを浸食するのを辛抱強く待つ。結果は、西洋人の発明、ヴェトコンの発見になる物である。(下229P)
・家(ホーム)とはどんな家もなくなったときに行くところだ、と思った。(255P)
・神は平和を好むと教わった。だが、キリスト王国ほど内戦の多いところはかってないと、いつか読んだことがある。(下366P)