ハヤカワ・ミステリ文庫 THE OLD MAN IN THE CORNER 山田辰夫・山本俊子訳
安楽椅子探偵物の代表作のように言われている作品。今世紀初頭に書かれた。事件の解明方法は初歩的で歯がゆい感じもするが、動機、殺人方法などは現代とあまり変わらないことに驚かされる。
フェンチャーチ街の謎
30年ほど前、カーショウとバーカーはある男を殺した。
カーショウは名前をスメザーストと変えたバーカーを強請って小金を得ていたが、そのスメザーストがロンドンにもどって来たとき、カーショウらしき男の死体が発見され、スメザーストが逮捕された。
しかし、事件後、カーショウを見た物が現れ、スメザーストは無罪に、事件は迷宮入りになる。
しかし老人は殺されたのは実はカーショウがスメザーストを殺したのであって、事件後スメザーストとして振る舞っているのはカーショウだと見破る。
ヨーク事件
競馬で失敗したスケルマートン郷の屋敷内で賭け屋のラベンダーが殺されたとき、彼は現場にいたヒギンズを突き出すが、無罪が証明され、今度は郷自身が疑われる。しかしこれもアリバイが証明され事件は迷宮入りに・・・。
老人はスケルマートン郷が強請られていたのを見て貞淑な妻が賭け屋を殺したが、それを卿が庇っていたのだと見破る。
地下鉄の殺人
地下鉄の中でヘイゼルデイーン夫人は青酸性の毒物で殺されていた。
夫人が最近つきあっていて、化学実験に興味を持っていたエリントン氏が疑われる。
現場には彼の名刺が落ちていた。
しかし夫人の言った一言を乗客が覚えていて、亭主のヘイゼルシュタインが犯人だった事が明らかになる。殺害方法は指輪に仕込んだ毒物。
リッスングローブの謎
不具の老人がバラバラ死体になってトランクにつめられ、捨てられていた。
娘のアメリアとその恋人ワイアットの共同犯行で、老人が受けた遺産金目当て。犯行後ワイアットが初めてやってきた派出婦に対し、老人のように振る舞って見せたところが鍵。
ブライトン暴行事件
モートン氏が妻のある事件を処理するために1万ポンドの現金を持って出かけたまま行方不明になる。5日後に口のまわりに毛のショールをまかれ、安楽椅子ににゆるく縛り付けられた瀕死のモートン氏が発見される。スキナーと言う男が暴行容疑で逮捕されたが、なぜかモートン氏は告訴を拒否する。
事実は妻に財布の紐を握られているモートン氏が妻から金を巻き上げようとはかった、自作自演劇。
エジンバラ事件
スコットランドの名家グレアム家では、ドナルドソン夫人が不具で頭も少しおかしい弟のデイビット・グレアムを偏愛していた。
そしてデイビットの貧しい婚約者エデイスを、将来与える予定の宝石で、飾らせてパーテイを開く。
ところがその後、夫人は宝石を奪われ、殺されているのが発見される。
事件はまず借りた宝石を返すときに、エデイスが一つだけチョロまかす。 見つけた夫人が怒る。愛する婚約者が危ないとデイビットが発作的に姉を殺したというもの。
ダブリン事件(世界短編傑作集1)
遺言状の書き換え問題だが一ひねりひねってある。
億万長者ブルックス氏にはパーシヴァルとマアレイの二人の息子がいたが、前者は放蕩、後者は孝行息子との評判だった。ブルックス氏がなくなり、さらにその弁護人が殺される。発見された氏の死亡当日書かれた遺言書には全財産をパーシヴァルに与えるとあった。
マアレイから「遺言状は偽物である。遺産は半分づつにするとした遺言書が有効」との訴えが出され、裁判になる。調べてみると、確かに遺言書は明らかな偽物。パーシヴァルは財産を失った上、弁護人殺しで訴えられる。
しかし「隅の老人」は「死の直前聞こえた父と息子の口論は、実は次男マアレイとの口論だった。次男は普段良い子のふりをしていたが、化けの皮がはがれて口論となったのだ。その場で老人は、遺言書を作り替え弁護人に預けた。そこでマアレイは、弁護人を殺し素人でも分かる偽の遺言状を作り上げ、兄を陥れようとしたのだ。」