探偵のG     スー・グラフトン

ハヤカワ・ミステリ文庫 "G" IS FOR GUMSHOE 嵯峨 静江 訳

 面白い小説の書きぶりである。33歳になったキンジー・ミルホーンに起こった関係のない二つの事件を並行的に描いている。事件そのものよりも主人公の生き様を見てくれと言うところかも知れない。

 新しい住居に引っ越したキンジーは、モハーヴェ砂漠にいるはずの母親を捜してくれとの依頼を受ける。一方でキンジーに恨みを抱く男が、殺し屋を雇ってつけねらっているとの情報を得る。砂漠で行き倒れのようになり、精神病院に運ばれたその母親を見つけ、依頼主に連絡、ところが帰り道大型トラックに襲われ、愛車はポンコツとなってしまう。

 身の危険を感じたキンジーはタフガイのボデイガードをやとう。そして彼と少し甘いムード。砂漠から助け出された母親の方は戻ってきた後、逃げ出すが、再び発見された時には死の一歩手前、やがて何かにおびえながら死んでしまう。原因は、彼女の別れた夫。彼の暴力のために姉妹や隣人が殺され、それを見た彼女は砂漠で暮らすようになったのだった。

 一方、殺人鬼の方は子ずれで妻と別れた男。ところがその妻は、子を要求しているという設定。最後は、子と妻をつれたキンジーのボデイガードとキンジーを捕まえた殺人鬼の対決になる。ボデイガードは、銃を捨て万事窮すと思われたが、妻の銃が火を噴き、殺人鬼はあえない最後をとげる。

 パレッキーの作品と同様、女性らしい表現がめだつ。ただ推理を追求する向きには、ちょっと物足りないかもしれない。それから細かすぎる描写が、時に全体をわかりにくくしているところがないでもない。

・<ヴァガボンド>モーテルに帰って、ダッフル・バッグをあけ、いつでもどこでも用のドレスを取り出した。ドレスをひろげてさっと一ふりした。この役にたつ服は、私が持っている唯一のドレスだったが、いつでも本当に重宝した。長袖の黒い襟なしのドレスで、後ろにファスナーがついていて、どんなに手荒に扱っても傷まない、すべすべの生地で出来ていた。たたいても、丸めても、その上に座っても・・・・。(71P)

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