ハヤカワ・ミステリ文庫 THE FAR SANDS 福島 正美 訳
外交官のジェームス・レニスンはキャロルと結婚したが、彼女には、アーサーという富豪と結婚している双子の姉、フェイがいた。
姉夫婦の不仲らしきものが見え、ある日、二人で訪問すると、二人は行方不明、翌日死体となって発見された。
アーサーは、糖尿病でインシュリンが切れると昏睡状態になるのだが、一人で夜半近くのラムズヘッドなる砂州に出かけ、そこで死んでいた。
フェイは、デインギー船のおもりに髪を絡ませて溺死していた。
状況からフェイが、アーサーの財産をねらって結婚し、インシュリンを盗みだし、事故死と見せかけて死ぬようにしむけ、成功したが、自分は事故で死んでしまったと考えられた。
双子の性格は遺伝する、ひょっとすると、キャロルも自分とそんな目的で結婚したのでは・・・・。レニスンに不安がよぎる。
しかし、キャロルは「フェイがそんなことをするはずはない」とレニスンを誘って強引に再調査を始める。
1枚不足していた写真から、アーサーは誰かに強請られていたに違いない、普段は電話連絡で証拠を見せない脅迫者だったが、フェイに海岸の岩の割れ目に埋めた金をとりだす現場の写真を撮られたに違いない、そして脅迫者は二人を殺さざるをえなかったと推理する。そしていくつかの状況から、脅迫者はアーサーとフェイの行動を脅迫者は見ていたに違いない、と考え隣接するホテルの宿泊者名簿から、ウイリアム・エリスを発見する。彼はロンドン高級住宅地で植物学者として優雅な生活を送っており、犯罪の決定的な証拠がない。迷った末、レニスンは電話で「殺害現場を見た、金を同じ場所におけ。」とエリスを逆に脅迫して待ち伏せる。約束の夜、果たしてエリスが現れ、二人は争いになるが、潮が満ちてきてエリスは絶命、レニスンは九死に一生を得る。
脅迫者を逆に強請り、おびき出すというアイデアが面白く思えた。キャロルという女性が事件を引っ張り、主人公はむしろひややかな目で見ているところも変わっている。
砂州の朝夕をりようしているところは「カックー線事件」と同じである。
・ぼくは完全にこれに頼り切っているわけですからね。 一回注射しそこなったら、おそらく十時間ないし十二時間のうちに昏睡状態におちいるんです。(47P)