新潮文庫 GOODBYE TO AN OLD FRIEND 中村 能三 訳
ソ連から大物宇宙科学者アレクサンドル・ベノヴィッチが英国へ亡命してきた。しばらくしてアレクサンドルと常に組み、世界的に有名な科学者ヴィクトル・パーヴェルが亡命を申請してきた。
亡命者を審査する事情聴取官エイドリアン・ドッズはパーヴェルの亡命申請に今一つしっくりこない。パーヴェルは厳重に監視されており、自身も外に出るのは夜だけで、星を見つめて故郷を思っている様子だし、調査にも従順だった。
しかし、パーヴェルががソビエトですばらしい待遇を受け、家族を愛していることはすでにわかっている。ソビエトにいてなに不自由ない彼が、家族の悲劇を省みず、祖国を捨てて西側に亡命したのは、いかなる理由によるものだろうか。
しかし英国は国を挙げて歓迎し、エベッツ首相等、彼の上司はパーヴェルの事情聴取を早め、アレクサンドルと会見させ、米国に引き渡すよう求め、それまで従わなければクビとまで驚かされ、ついに二人の二度にわたる会見が実現する。
ところが会見後、パーヴェルは「もう、アレクサンドルとはあわない。私は亡命をやめた。帰国する。」と突然表明。国際慣習法上、英国はそれを認めざるを得ない。
パーヴェル帰国後、厳重に警戒していたアレクサンドルを他所に移そうと2台の護衛車をつけて外に出した。途中不振な一団におそわれ、護衛もアレクサンドルもすべてが殺されることとなった。偉大な天文学者であったパーヴェルは星を見ただけで自分とアレクサンドルの収監されている場所を探し当てたのだ。それがソビエトに連絡され、アレクサンドルがおそわれたのだった。
フリーマントルの作品を読むのは「消されかけた男」についで2作目だが、
1 東西両陣営が互いに相手を出し抜こうとしており、それが英国情報省の立場から描かれている。
2 最後はソビエトにしてやられる形になっている。
3 個人が相手のねらいを十分に言い当てているにも関わらず、上がそれを理解できない。最後は個人が愛想をつかし反乱してしまう。
という共通パターン。話が一つにまとまっていて、非常に面白く、最後に読者が「してやられた。」と感心する仕組みになっている。