ウイチャリー家の女    ロス・マクドナルド

ハヤカワ・ミステリ文庫 THE WYCHERLY WOMAN 小笠原 豊樹 訳


私はロスアンゼルスの私立探偵リュウ・アーチャー。依頼人は、砂漠のはずれにある町メドウ・ファームズに住む富豪ホーマー・ウイチャリーである。「11月の初めから2ヶ月の船旅にでたが、戻ってみると船出の時分かれた娘フィービがいなくなっていた、探し出してほしい。」家庭が複雑で、若い妻のキャサリンとは昨年別れ所在不明、事件について彼女には何も聞いてくれるなとの事。ホーマーの妹、ヘレンの証言等から、船出の時、キャサリンが押しかけ、金をよこせと一騒動あったということだ。
消えたフィービは、スタンフォードだったが、ボーイフレンドのボビー・ドンカスターの勧めで今のカレッジに移った。成績は良く、まじめな学生だったようだ。彼女は身のまわりのものしか持ってでていない。偶然にキャサリンの住所がサンフランシスコにある退役中将のもっていたマンデヴィル屋敷と判明する。しかし屋敷は売りに出されていた。扱っている不動産屋のベン・メリマンを尋ねるが、所在不明。再び屋敷に戻り、中に入るとベンが殺されていた。中将の話では、ベンは、中将に5万ドルである男に家を売らせ、75000ドルでキャサリンに買わせ、いままた8万ドルで売りに出していたのだという。
キャサリンは、サクラメントの安ホテルに滞在していたらしいが、ベンがしばしば訪れていたようだ。彼女の後を追い、やっと探し当てるが、厚化粧し彼女は絶望の極にあった。運転手の話からフィービの滞在していたアパートがわかった。隣の部屋にベンの義弟のスタンリーが滞在していた。彼とベンの妻の話から、彼らが屋敷の販売代金を巻き上げたことが分かった。やがてそのスタンリーも音楽視聴室で殺された。
犯人探しで警察とごたごたしている時、メデイシン・ストーンで崖下に落ちた車の中から女の腐乱死体が見つかた、との報。ヘレンの夫カール・トレヴァはフィービらしいと主張。しかい彼女を生存しているのを見た、という複数の証言と一致しない。
事件当時現場付近を車を走らせていたボビーを見つけ出して、問いただすと意外な証言がでる。「僕たちは結婚しようと思って逃げ出した。その前にお母さんを訪問したところ、殺されていた。入ってきたベンの助言で事件をやみに葬ろうと、私が車に死体を載せて運搬、崖から落とした!」
サナトリウムにいるフィービが発見された。彼女は自分が三人を殺したとまで口走るが、嘘と分かる。ベンの妻が所持していたテープから、カール・トレヴァとキャサリンの不倫が明らかにされ、ベンとスタンリーがこれを種に強請ったことも判明した。さらにサクラメントのホテルで絶望の極にいた女はキャサリンではなく、カールがフィービに演技させたものだった!すべてが明らかになった。アーチャーが病床の犯人に告白書を書かせるが、犯人の命の火も消えようとしていた。
物質的には豊かだが、愛のないアメリカのある家庭の例が実に丁寧に書かれた作品であると想う。探偵も決して奇をてらわず、捜査の王道を突き進んでいる感じがする。このような粘っこさというのは是非学ばなければいけないと思う。その亀裂にベンを中心とする悪玉グループがつけこんだわけだ。
・ だれそれが悪いということは、我々がもうそろそろ止めたほうがいい習慣の一つです。こんな事になったのは両親が悪いといったり、あるいは両親が子供の非行を責めたりするだけでは、問題は部分的にしか解決されず、いっそう解決困難になるだけです。(31P)
・ 人生というのは、いつまでも続く勉強だよ。卒業も出来ないし、学位も取れない。だから、せいぜい努力して退学にならないようにすることだ(349P)
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