夜歩く      デイクスン・カー

創元推理文庫  IT WALKS BY NIGHT  井上 一夫 訳

 パリ予審判事バンコランと私、ジェフは、サリニー公爵新婚披露宴に招待されて、有名なフェネリの経営するクラブに赴く。
 サリニー公爵は、スポーツ好きで有名で、3週間のオーストリア旅行を終えて帰ったばかり。新妻のルイズ・ローランは、再婚だが、「前夫アレキサンドル・ローランは殺人鬼で、この結婚を妨害しようとしている、私は家で彼の亡霊を見た。」とおびえていた。
 ところが11時半過ぎ、カード室でかがんだ形で首を切られてしんでいるサリニー公爵が見つかった。入り口は警官がいたり、バンコランが見ていたりで外部から侵入の形跡はない。死体そばには、凶器に使われた飾りものの剣。
 バンコランが調べると、上の階にはサリニー公爵の友人ヴォートレルと密会を約していたらしいシャロン・グレイがいた。捜査とともに話しは発展し、ヴェルサイユのシャロン邸で、ヴォートレルが殺され、フェニルが麻薬商売をしていて、おかげでまわりの者が中毒になっていることが分かる。 犯人の見通しをつけたバンコランが、サリニー公爵邸を捜査し、地下室からさらに一遺体を発見。
 実はアレキサンドルはサリニー公爵は容貌がよく似ていたため、公爵を殺して、公爵になりすまそうとした。しかし、ルイズはこれを嫌い、カード室で殺した。彼女は、本当はヴォートレルを愛し、多額の金を彼の麻薬のためにつぎ込んだが、彼がシャロンを愛していると知ると彼も殺してしまった。さらに麻薬をエサに言い寄るフェニルも・・・・。

 トリックはカード室の殺人だが、「靴の紐をなおしてくれ。」と男にたのみ、かがんだところを上から刀でばっさり。しかし返り血はあびなかったのだろうか、あるいは女の一刀で簡単に人の首を落とせるものだろうか、などの疑問が残る。
 殺人時間のアリバイは、殺した女が何くわぬ顔で出てきて、バンコランのそばにすわり、ヴォートレルにカード室に入って貰い「あら、公爵がカード室に行くわ。」と言い、錯覚をおこさせるというものだが、ありふれている。さらにアレクサンドルがサリニー公爵になりすます、と言うのも、双子とかあるいは何十年見かけないというならともかく無理がある。パリの町の様子が偲ばれることと、なんとはなしのおどろおどろしさは優れていると思うけれども・・・・。

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